人類とともに世界へ広がった腸内微生物 工業化で消える種も

南米のボリビアとアフリカのタンザニア。遠く離れた地域に暮らす先住民の腸内から、1200種を超える共通の微生物が見つかった。人類が世界各地へ広がったとき、腸内の微生物も人間とともに移動し、何万年にもわたって受け継がれてきたと考えられる。米スタンフォード大学などの研究チームは、両集団の腸内微生物をゲノム解析し、その進化の歴史を探った。研究成果は10月7日、科学誌『Nature』に掲載された。

研究チームは、ボリビアの先住民ツィマネ85人の便を解析し、細菌と古細菌を合わせて1408種を確認した。さらに、タンザニアの狩猟採集民ハッザ137人の腸内微生物のゲノムデータと比較したところ、ツィマネで確認された種の87.4%に当たる1231種が両集団に共通していた。両集団の祖先は遠い過去に分かれ、地理的にも大きく隔たっている。それにもかかわらず、多くの微生物が共通している。

では、これらの微生物は人類とともに移動してきたのだろうか。研究チームは、両集団でそれぞれ4個以上のゲノムが得られた636種について、DNA配列の違いや遺伝子の交換の痕跡を詳しく調べた。その結果、両集団の微生物が遺伝的に隔たった時期は、中央値で約1万7090年前と推定された。この時期は、人類がアフリカを出て世界各地へ広がり、アメリカ大陸へ到達するまでの歴史と整合する。研究チームは、腸内微生物も人類の移動に伴って広がり、世代を超えて受け継がれてきたと考えている。

一方、ツィマネで確認された1408種のうち848種は、アジアや欧州、北米の工業化された集団の便試料では検出されなかった。食生活や生活環境の違いなどが、こうした微生物の分布に関係している可能性がある。ただし、微生物の減少が健康にどのような影響を及ぼすのかは、まだ明らかになっていない。人類の移動史を体内の微生物から読み解くこの研究は、現代の暮らしが人間と微生物の長い共存関係に及ぼす影響を考える手掛かりとなる。

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