
かつての月が落下した可能性、現在の金星に衛星がない理由を研究
金星には、地球の月のような衛星がない。地球と金星は大きさや質量、岩石でできていることなどがよく似ているのに、なぜ金星には月がないのか。その理由について、米カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームが、金星がかつて月を持っていたとしても、最終的に金星へ落下した可能性を示した。
研究チームは『The Astrophysical Journal』で14日、金星と、仮にその周りを回る月があった場合の動きをコンピューターで計算した。地球では、月が年間約4cmずつ地球から遠ざかっている。地球と月の間に働く「潮汐力」によって、月の軌道が少しずつ変化しているためだ。
一方、金星は現在、自転が非常に遅く、1回転に地球の日数で243日かかる。惑星の自転が月の公転より遅い場合、潮汐力によって金星の周りを回る月は地球の月とは逆に、金星へ近づく方向に軌道が変化すると考えられる。
研究チームは、金星の自転速度や、地球の月の0.01~10倍の質量を持つ月など、さまざまな条件を設定して計算した。その結果、条件によっては月が金星へ近づき、最終的に金星の潮汐力によって破壊されることが分かった。特に、金星の初期の自転が遅い場合や月の質量が大きい場合には、月が比較的短い時間で破壊されるケースがあった。一方、自転が速い金星では、月が長期間残る条件もあった。
ただし、今回の研究は金星に実際に月が存在したことを証明したものではない。「もし金星に月があったら、その月はどうなるのか」を計算した研究だ。
では、なぜ金星に月があった可能性を考えるのだろうか。地球の月は、太古の地球に巨大な天体が衝突し、飛び散った物質からできたと考えられている。金星にも同じような出来事が起きていた可能性がある。
もし金星にも月ができ、その後に金星へ落下したのなら、衝突の痕跡が残っているかもしれない。しかし、金星の表面の約80%は同程度の年代を示しており、過去の火山活動などによって大規模に作り替えられたと考えられている。そのため、古い痕跡を地表から見つけるのは難しい。
研究チームは今後、金星の内部に残る構造などを詳しく調べ、過去に月が存在した痕跡を探るとしている。月の有無を手掛かりに金星の進化を調べることで、地球によく似た金星がなぜ大きく異なる姿になったのかを知る手掛かりにもなりそうだ。さらに、遠くの恒星を回る地球に似た惑星でも、自転速度によっては衛星を長く保てない可能性がある。
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