
CO₂を出す農業の石灰は、長期的にはCO₂の吸収源だった
農地の土壌を改良するために使われる石灰は、二酸化炭素(CO₂)の排出源と考えられてきた。ところが、米国のミシシッピ川流域を対象にした研究から、長期的には大気中のCO₂を取り込む「吸収源」として働いていた可能性が示された。米国のイェール大学などの研究チームが9月23日、英科学誌『Nature』で発表した。石灰をまくとCO₂が出るのに、なぜ結果が逆転するのだろうか。
農業では、酸性になった土壌を中和して作物を育ちやすくするため、炭酸カルシウムなどの石灰をまく。炭酸カルシウムは土壌中の酸と反応するとCO₂を放出するため、これまでは石灰をCO₂の排出源として計算してきた。一方、農業によって土壌に加わる酸は、土壌や河川で起こるCO₂の放出にも影響を与える。
研究チームは、石灰をまいた場合だけでなく、石灰をまかなかった場合に、土壌や河川を通る炭素の動きがどうなるかまで含めて調べた。その結果、石灰をまくとCO₂が放出される一方、長期的には土壌の酸性化を抑え、石灰を使わなかった場合に起こる炭素の放出を減らすことが分かった。そのため、流域全体では大気中から取り込まれるCO₂のほうが多くなる。
1900〜2015年の期間について、研究チームは石灰によって差し引きで大気中から取り込まれたCO₂の量を2.2〜3.7億トンと推定した。河川に含まれる重炭酸塩(炭素を含む物質)の量から独立に求めた推定値も約4億トンとなり、計算結果を裏付けるものだ。
これは、石灰そのものがCO₂を直接吸収するという意味ではない。また、従来のCO₂排出量の計算が単純に「間違い」だったわけでもない。石灰をまいたときの反応だけでなく、石灰を使わなかった場合に土壌や河川で起こる炭素の移動まで含めて見ると、長期的なCO₂の収支が変わることを示した研究だ。また、差し引きでCO₂を取り込む効果が現れるまでには長い時間がかかるとされる。今回の結果もミシシッピ川流域という特定の地域を対象としたものだ。石灰を増やせば温暖化対策になるという単純な話ではなく、農地から河川までのCO₂の動きを長期的に捉える必要があることを示している。
(冒頭の画像はイメージ)

