
はやぶさ2、劣化したイオンエンジンを組み合わせて航行継続
小惑星探査機「はやぶさ2」で、イオンエンジンの一つに重大な不具合が発生した。2014年の打ち上げから10年以上にわたって宇宙を飛び続ける中、4基のエンジンはいずれも長期間の使用による劣化の影響を受けている。そこで宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、異なるエンジンに残された使える機能を組み合わせる「クロス運転」を試し、運転できることを確認した。
イオンエンジンは、推進剤のキセノンを電気の力で高速で噴き出し、その反動で探査機を少しずつ加速させる装置だ。はやぶさ2には4基が搭載されている。A・C・Dの3基は性能低下が進んでいたため、拡張ミッションでは温存されていたBを主に使っていた。しかしBも劣化が進み、2026年8月には放電が繰り返し発生した。調査の結果、イオンを作る「イオン源」への電流供給機能が故障していることが分かった。
そこでJAXAは、Dのイオン源とBの中和器など、異なるエンジンに残された機能を組み合わせた。中和器は電子を噴き出し、イオンエンジンから出たイオンを電気的に中和する装置だ。探査機内部の接続を切り替えて運転したところ、イオンエンジンとして作動することを確認した。
こうしたクロス運転は、初代「はやぶさ」の帰還でも使われた。2009年11月にイオンエンジンDが停止し、Cも長期間の使用で性能が低下する中、Aの中和器とBのイオン源を組み合わせて運転を続け、2010年の地球帰還につなげた。はやぶさ2は初代の経験を踏まえ、こうした運転ができるよう設計されている。
はやぶさ2は今後、地球の重力を利用して探査機の進む方向や速度を変え、目的地へ向かう軌道を調整する「地球スイングバイ」を2027年12月と2028年6月に行い、2031年には小惑星「1998 KY26」への到着を目指す。今回のイオンエンジンの劣化に関する知見は、2028年度打ち上げ予定のDESTINY+向けイオンエンジンの設計にも反映される。長期間の宇宙機運用では、故障を防ぐだけでなく、劣化した装置に残された機能を組み合わせて生かすことも重要になる。

(冒頭の画像は「はやぶさ2」のイラスト©JAXA)

