世界最高レベルのアンモニア合成能力 大分大が新触媒

大分大学の永岡勝俊准教授らは、従来よりも理想的な条件でアンモニアを合成できる新触媒を開発した。世界最高レベルの合成能力を示しており、既存のプロセスの省エネ化・合理化、再生可能エネルギー由来のアンモニア生産プロセスの実現が期待できる。英国王立化学会の『ケミカル・サイエンス』で19日に公開された。

アンモニアは化学肥料の原料として重要であり、近年では再生可能エネルギーの貯蔵や輸送に用いる「エネルギーキャリア」としても注目されている。従来の工業的な合成方法は、110年前に開発された「ハーバー・ボッシュ法」として教科書でも有名であり、世界の食糧生産の根幹を担ってきた。しかし、この合成法で用いられている触媒は鉄を主成分としており、アンモニアが高濃度になると充分に機能しないという問題があった。そのため、高温高圧(450度以上、200気圧以上)で反応させても、投入したエネルギーに見合った量のアンモニアが得られない。現実的な条件(350~400度、10~100気圧)で高濃度のアンモニアを得られる新触媒の開発が求められてきた。

今回、工業上理想的な条件において、生成速度換算で従来触媒の約2倍という、非常に高いアンモニア合成性能を示す新触媒「Ru/Pr2O」(酸化プラセオジムにルテニウムの微粒子を付着させたもの)を開発した。さらに、この新触媒の表面は特殊な積層構造を持つこと、その表面構造と担体の塩基性の相乗効果によって、高いアンモニア合成性能を実現していることを明らかにした。

この研究は、科学技術振興機構(JST)のCREST「再生可能エネルギーの輸送・貯蔵・利用に向けた革新的エネルギーキャリア利用基盤技術の創出」で永岡准教授が研究代表者を務める研究課題「エネルギーキャリアとしてのアンモニアを合成・分解するための特殊反応場の構築に関する基盤技術の創成」の一環で行われた。

画像提供:大分大学・科学技術振興機構(JST)

 
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