慶大・早大など、腸疾患に関わる口腔細菌を特定 治療法・薬に期待

腸疾患に関わる口腔細菌を特定 慶大・早大など

腸内環境が乱れた時に、口内に存在する菌の一種が腸内に定着しやすくなり、潰瘍を引き起こすケースがあることを慶應義塾大学、早稲田大学などの共同研究グループが明らかにした。研究成果は、米科学誌『サイエンス』に20日付で掲載。炎症性疾患の予防法や治療薬・診断薬などの開発につながると期待される。

人を含むすべての動物は、さまざまな細菌と共生関係にあり、表皮、消化管、口腔にも多様な常在細菌が存在する。腸内にも、多様な腸内細菌が均衡を保ちながら集まって「細菌そう」を形成しており、これらの細菌の生命活動が、宿主である動物の健康維持にも大きな役割を果たしていることが知られている。

研究グループは今回、炎症性腸疾患や大腸がんなどの患者の便から口腔細菌が多く検出されることに注目。口腔細菌が腸管に定着することが疾患とどう関わっているのかを調べた。

無菌状態で育成されたマウス(無菌マウス)にクローン病患者の唾液を経口投与すると、大腸で免疫細胞の一種であるTH1細胞が顕著に増加した。この時マウスの腸内に定着していた細菌約30種を単離・培養し、それぞれの菌が腸でどう作用するか調べたところ、クレブシエラ・ニューモニエという細菌が原因となっていたことが分かった。

さらにさまざまなマウスで調べたところ、宿主の遺伝型によっては、クレブシエラ属菌が腸内に定着した際にTH1細胞が過剰に活性化し、炎症を引き起こすことが分かった。この菌がクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の発症に関与する可能性が示唆された。

なお、通常のマウスにはクレブシエラ属菌が腸内に定着しなかったが、抗生物質を投与した際には定着、増加がみられた。また、クレブシエラ属菌は腸疾患患者だけでなく、健常者の唾液からも見つかっている。これらのことから、普段、口腔細菌が腸に到達しても細菌叢が定着を防いでいるが、抗生物質などで腸内細菌が減るなど細菌叢が乱れると定着を防げず、増殖しやすくなると考えられるという。

研究グループは、クレブシエラ属菌を標的にした薬剤開発を通して、予防法や治療薬を開発できる可能性を示した。一方で、「長期的に過剰量の抗生物質を服用した場合には、健常者でも腸管へのクレブシエラ属菌の定着が起こる可能性があり、過度な抗生物質の服用には気を付けるべき」ともコメントしている。

慶大・早大など、腸疾患に関わる口腔細菌を特定 治療法・薬に期待

画像提供:慶應義塾大学・早稲田大学

(冒頭の写真はイメージ)

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