金星が干からびた惑星になった理由

千葉工業大学惑星探査研究センターの黒澤耕介研究員は9月7日、地球と金星の運命を分けた原因について、「天体衝突によって金星が干からびた」という新説を発表した。欧州の科学誌『アース・アンド・プラネタリー・サイエンス・レターズ』の電子版に掲載された。

地球と金星は質量がほとんど同じで、太陽からの距離も近いため、初期の金星にも地球と同程度に水があったと考えられている。しかし、現在の金星表層は極度に乾燥しており、地球の海水量の10万分の1しか水分が存在していない。地球よりも太陽に近い金星では海が蒸発し、水蒸気の大気をまとっていた可能性が高い。水蒸気は若い太陽からの強い紫外線で水素と酸素に分解され、軽い水素は宇宙空間に逃げていく。問題は、「後に残された膨大な酸素が、どのように消費されたのか?」という点にある。

初期の金星では、現在の1万倍以上の頻度で天体衝突が起きていたと考えられ、「天体重爆撃期」と呼ばれる。天体衝突は金星の地殻・マントルを粉砕し、岩石塵を高温の大気中に放出する。大気中の酸素によって岩石塵が酸化され、大気から酸素が取り除かれると考えた。黒澤研究員は初期金星への天体重爆撃の数値モデルを構築し、天体重爆撃によって粉砕される岩石の総量を計算した。大気中に放出される岩石塵の総量は、現在の地球大気質量の1万倍にも及び、原始金星において主要な酸素消費源になり得ること、強い紫外線によって分解された水素が宇宙空間に逃げていく効果と合わせると、金星表層から地球の海洋の質量相当の水分を消失させる可能性があることを示した。

初期の地球にも、金星と同程度の天体重爆撃があったと推定される。しかし、地球は太陽からの距離が金星よりもわずかに遠いため、大気中の水蒸気は冷えて海洋を作り、強い紫外線による分解を免れたと考えられる。この場合、天体衝突によって岩石塵が大気中に放出されても、岩石塵の酸化は進まない。

惑星の表層にある水が液体の状態なのか、気体の状態なのかという違いによって、天体重爆撃による影響に違いが生じ、地球は水の惑星となり、金星は干からびた惑星になったと考えられる。

画像提供:NASA

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