睡眠時間は、電気製品の影響を受けているのか?

「現代人は、さまざまな電気製品に囲まれているために、睡眠時間が本来の自然な状態よりも短くなっているのではないか?」 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジェローム・シーゲル氏らは、この仮説をもとに「3つの前工業化社会における自然睡眠とその季節変化」と題した論文を、米科学誌『カレント・バイオロジー』電子版に10月15日発表した。

シーゲル氏らは、現在も狩猟採集生活を送っているタンザニアのハッザ族とナミビアのサン族、および狩猟と穀物栽培をしているボリビアのチマネ族の3つの集団で睡眠パターンを調査した。その結果、数千kmも離れた3つの集団のいずれにおいても、同じようなパターンが見つかった。この睡眠パターンは近代以前の人間にも当てはまると推測される。

彼らの睡眠時間は平均5.7~7.1時間で、電気製品に囲まれた現代人と変わらなかった。また、夏と冬ではほぼ1時間の差があったが、日ごとの変動は目覚める時間よりも眠り始める時間に強く関係していた。3つの集団のいずれも日没後すぐには眠りにつかず、日没後、平均3.3時間して眠りにつく。目覚めるのは、たいてい日の出前で、気温が低下する夜間は途中で目覚めることなく一貫して眠り、日の出前の気温が最も下がった頃に目覚める。

また、周囲の明るさは朝が最大で、昼に大幅に減少した。このことは、3つの集団はいずれも昼間は日陰を求め、体内時計(脳の視床下部にある視交叉上核にある)が朝に最大の活性を持つことを示している。なお、昼寝は冬に7%以下、夏に22%以下で発生していた。

エアコンや照明器具に囲まれた近代的な睡眠環境では、睡眠時間の自然な調節因子である温度や光の変化が少ない。自然環境を生活の中で再現することで、いくつかの近代的な睡眠障害の治療に有効であると考えられる。

(写真はイメージ)