
「一直線」の進化論を覆す?人類の空白期を埋める2つの最新研究
人類は、より大きな脳を持ち、道具や火を使いながら一直線に進化してきた――。人類の進化については、長らくそのようなイメージで語られることが多かった。しかし近年、その見方を見直す研究成果が相次いでいる。今年1月に科学誌「Nature」に掲載された研究では、モロッコで見つかった初期ホモ属の化石が、私たちにつながる人類の祖先に近い系統である可能性が示された。一方、今月に科学誌「Science Advances」に掲載された研究では、小型の化石人類ホモ・フロレシエンシスについて、狩猟や火を恒常的に利用していた証拠は確認できなかったと報告された。いずれも、人類進化の新たな姿を示す成果として注目されている。
モロッコで見つかった「空白期」を埋める化石
モロッコ・カサブランカ近郊のトマス採石場で発見された下顎骨や歯などの化石は、高精度の年代測定により約77万3000年前のものと判明した。研究チームは、これらの化石が古い特徴と新しい特徴が組み合わさったモザイク状の形態を示し、現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人へとつながる系統の初期の集団である可能性があるとしている。一般に「原人」と呼ばれることが多いホモ・エレクトスなど初期ホモ属にもみられる特徴を備えているが、今回の化石は特定の種には分類されておらず、初期ホモ属として研究が進められている。約100万~60万年前のアフリカの人類化石は少なく、人類進化の空白期を埋める重要な発見として注目されている。
「ホビット」の火と狩猟の痕跡を再検証
一方、ホモ・フロレシエンシスは約10万~5万年前にインドネシア・フローレス島に生息していた、身長約1メートルの小型の化石人類で、「ホビット」の愛称でも知られる。ホモ・エレクトスの子孫とする説が有力だが、より古いホモ属に由来するとする説もあり、その起源にはなお議論が続いている。これまで狩猟や火を利用していた可能性が指摘され、人類進化の中でも特異な存在として注目されてきた。しかし今回、ゾウの仲間ステゴドンの骨に残る傷跡を詳しく分析した結果、狩猟の証拠は確認されず、肉食動物が残した死骸を食料として利用していたと考えられるという。また、火の利用を示すと考えられていた痕跡も再検討の結果、鉱物による着色だった可能性が示された。火の利用は、自然火を利用する段階から継続的に管理・利用する段階、さらに自ら火を起こす段階へと発達したと考えられている。その始まりの時期については約180万年前から約80万年前まで諸説あるものの、少なくともホモ・エレクトスの時代には継続的な利用が始まっていたと考えられており、この結果はホモ・フロレシエンシスが異なる進化の道を歩んだ可能性を示唆している。
最新研究が描き出す「人類進化」の新たな姿
今回の二つの研究は、人類進化を「能力が次第に高まり、一直線に現生人類へ至った歴史」と捉える見方を見直すきっかけとなる。私たちにつながる祖先集団がどのように誕生したのかを探る一方で、別の地域では独自の特徴を持つ人類が長く生き続けていたことも明らかになりつつある。人類の歴史は一本の道ではなく、多様な系統がそれぞれの環境に適応しながら歩んだ複雑な進化の積み重ねだったことを、最新の研究は改めて示している。
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