Google、宇宙でAI計算の実証に成功 衛星データセンター構想が前進

米Googleは10月30日、宇宙空間にAIの計算基盤を構築する研究プロジェクト「Project Suncatcher(プロジェクト・サンキャッチャー)」で、試作衛星に搭載したAIが生成した応答を地上で受信したと発表した。同プロジェクトは2025年11月に構想を公表し、地上での技術検証を経て、2026年10月に初の試作衛星を打ち上げた。今回、衛星上でAIに宇宙をテーマにした俳句を作らせ、地上に送信することに成功したことで、宇宙に大規模なAI計算基盤を設ける構想は、実際の軌道上での実証段階に進んだ。

同プロジェクトは、AIの利用拡大に伴うデータセンターの電力需要増大を背景に、宇宙空間で大規模なAI計算を実現できるかを探る長期研究だ。Googleは将来の衛星群について、地球の昼と夜の境界に沿って周回する「ドーン・ダスク型の太陽同期軌道」を想定している。この軌道では地球の影に入りにくく、太陽光をほぼ継続して受けられる。研究論文では、地上の中緯度地域に設置した太陽電池と比べて、年間に最大8倍の太陽エネルギーを得られる試算だ。衛星には太陽電池と、AIの計算を高速処理する専用半導体「TPU(Tensor Processing Unit)」を搭載する。さらに、衛星同士をレーザー光で接続し、複数の衛星が計算を分担する仕組みを目指す。低軌道は地上との通信距離を短くできる一方、軌道の向きによっては一部地域との通信遅延が増えるという課題もある。

今回の試作衛星は、衛星画像を手掛ける米Planetと共同開発し、10月1日に米SpaceXのロケットで打ち上げた。搭載したTPUは、地上のデータセンターでも使われている「Trillium」という製品系列で、宇宙専用に開発された半導体ではない。Googleは打ち上げ前に陽子線を照射する試験を行い、5年間の宇宙飛行で想定される累積放射線量を上回る条件でも、AIの計算処理が正常に動作することを確認した。ただし、内蔵メモリーではより低い線量で異常が現れており、実際の宇宙環境での検証が続いている。10月30日の発表では、搭載したAIモデル「Gemma 4」に俳句の生成を指示し、衛星がノルウェー領スバールバル諸島付近を通過した際、その文章を地上で受信した。これはAIの学習ではなく、学習済みモデルに指示を与えて回答を生成する「推論」の実証だ。

今後の課題は、宇宙特有の環境で半導体を安定して動かすことだ。宇宙放射線による誤作動への対策に加え、真空中では空気による冷却ができないため、チップの熱をヒートパイプで運び、放熱板から宇宙空間に放射する仕組みが必要となる。さらに、衛星同士を近距離に保ちながら、高速レーザー通信を維持する技術も欠かせない。Googleは2027年に2機の衛星を打ち上げ、衛星間通信を実証する計画だ。今回の成果は1機の衛星による小規模な動作確認であり、宇宙に大規模なAIデータセンターを構築するには、冷却や通信、放射線対策、打ち上げ費用など多くの課題が残されている。

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