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脳波でアンドロイドを操作すると、一体感が高まることを発見

国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の西尾修一主幹研究員らは、人間を模したロボットのアンドロイドの操作感として、ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)を介して脳波で操作すると、体の動きで操作した場合に比べて、アンドロイドとの一体感が高まることを発見した。脳による操作のメリットを活かした新しい応用分野の開拓に繋がるものと期待されている。22日発行の英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。

考えるだけで機器を操作できるBMIには大きな期待が寄せられている。しかし、現状は性能が限定されており、リモコンや体で操作するのに比べて遅延が大きく、健常者への応用は困難だった。

今回、アンドロイドを脳波によるBMIで操作した場合と、体の関節部などにセンサーを取り付けて体の動きをとらえるモーションキャプチャー装置で操作した場合とで比較した。一定時間の操作をした後、アンドロイドを「どの程度自分の身体と感じたか」アンケートで問う主観評価と、操作者の皮膚の電気の流れやすさを測定する客観評価を行った。その結果、いずれもBMIを介して脳波で操作する方が、アンドロイドをより強く自分の身体として感じられることがわかった。

脳波を用いるBMIでは、操作者の意図を識別するための脳波データを蓄積するため、通常、動きを考えてから実際にアンドロイドが動くまでに遅延が生じる。実際、今回の実験では体の動きで操作する場合に比べて、脳波で操作する時は0.5秒程度の遅延が生じていた。こうした遅延があると普通は操作感を失い、操作対象との一体感も阻害される。しかし、遅延が少ないモーションキャプチャーによる操作よりも、脳波での操作の方がアンドロイドとの一体感は強く感じられた。運動を意図しただけで実際には体が動いていないので、遅延が大きくともギャップが生じず、意図通りにロボットが動く様子を見ることで強い一体感が生じたものと考えられている。

将来は、映画のようにアンドロイドを自分の分身として使う世界が実現される可能性もある。また高齢になり体が思うように動かないといった心身にギャップのある状態でも、BMIで思い通りの動作ができれば脳の活性化・健康維持に寄与する、といった応用も考えられるだろう。

画像提供:株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

 
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