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羽生善治の「永世七冠」って何?【ニュースのコトバ解説】

2017年12月5日、羽生善治棋聖が渡辺明竜王を破り、「永世七冠」を達成しました。「永世七冠」を成し遂げた人はこれまでに一人もおらず、羽生氏が史上初。まさに前人未到の偉業ということで、国民栄誉賞受賞も取りざたされています。

「永世七冠」とは、将棋の「名人・竜王・王位・王座・棋聖・王将・棋王」の7タイトルで「永世」の称号を取ることをいいます。

大変な快挙なのですが、将棋になじみのない方には少し分かりにくい話かもしれません。ここではこの「永世7冠」について解説します。

将棋のタイトル戦について

前述のとおり、将棋には「名人・竜王・王位・王座・棋聖・王将・棋王」の7タイトルがあります。さらに今年新たに誕生した「叡王」を加えると合計8タイトルになりますが、叡王には現在まだ「永世」資格がありません。これらのタイトル獲得のための「タイトル戦」がすべてのタイトルにおいて毎年1回行われており、これが「名人戦」、「竜王戦」などと呼ばれているものです。各タイトル戦で勝ち抜き、頂点に上り詰めた1人だけが1年間、羽生棋聖、渡辺竜王のように、このタイトルを名乗ることができます。

タイトル戦では、まず前年度の王者に対して挑戦者を決める予選と本選とが行われ、これを勝ち抜いた1人が王者に挑戦。挑戦者が勝てばタイトルを奪取することができ、王者が勝った場合は防衛成功となり、さらに1年継続してタイトルを保持することができます。

一度このタイトルを持つだけでも大快挙なのです。歴代プロ棋士の数は合計300人ほどですが、タイトルを一度でも取ったことのある人はたったの30人ほど。挑戦者になったことがあるだけでも、将棋界では一目置かれる存在として扱われます。

タイトル獲得回数と永世称号について

次に「永世」称号についてですが、「永世」称号とは、同じタイトルを連続して保持したり、一生のうちに何度も獲得したりすると、その人の強さが認められて、タイトルの頭に「永世」が付くようになります(「永世王位」「永世王座」など)。

各7タイトルにおけるの「永世」獲得条件は以下の通りです。

永世竜王 連続5期または通算7期
永世名人 通算5期
永世王位 連続5期または通算10期
名誉王座 連続5期または通算10期
永世棋王 連続5期
永世王将 通算10期
永世棋聖 通算5期

このどれかのタイトルで「永世」称号を獲得したことのある人は、歴代でたったの10人しかいません。それだけ難関の「永世」称号ですが、さらにこれを7タイトルですべて制覇した状態が「永世7冠」になります。

羽生棋聖は今回、「竜王戦」にて渡辺竜王に勝利し、通算7度目の「竜王」となったため、「永世竜王」の称号を獲得しました。これにより、7つのタイトルすべてで「永世」称号がそろったので、みごと「永世七冠」を達成したというわけです。

実は羽生氏は以前7タイトルすべてを同時に保持していた七冠独占の時期もあり、これも史上初の快挙として話題になりました。毎年タイトル戦で競われる7タイトルの、過去28年間の保持者の半分が羽生善治氏ということからも、そのすごさが伝わってきます。

プロ棋士の中でも最高峰を意味するタイトル。さらに複数回そのタイトルを獲得した上で到達できる永世称号。「永世七冠」の重みがお分かりいただけたのではないかと思います。

(写真はイメージ)