「犬には人を見る目がある」は本当か?犬の社会的な理解力を検証

「犬には人を見る目がある」とよく言われるが、飼い犬が気前のよい人(餌を与える)とそうでない人(与えない)を明確に区別できている訳ではないという実験結果がオーストリア・ウィーン獣医大学の研究チームによって示された。犬の社会的な理解力について再検討が求められることになりそうだ。国際学術誌「Animal Cognition」のオンライン版に掲載された。

犬は、人間のもっとも身近な動物のひとつであり、人の気持ちを理解できると考えられてきた。しかし2022年にオーストリアのウルフ・サイエンス・センターで、群れで生活する犬やオオカミに対して、人が他の犬やオオカミに食べ物を与える様子を見せたり、自分でその人から食べ物をもらう体験をさせたりした後、どの人に近づくかを観察したところ、明確に区別して反応する傾向は見られなかった。この原因の一つとして、これらの動物が人間との関わりの経験が限られていたことが考えられる。

今回、研究チームは子犬から高齢の犬まで、さまざまな年齢の飼い犬40匹を対象に同じように実験を行った。その結果、飼い犬たちも「気前の良い人」と「そうでない人」とを区別して行動する傾向は見られず、どちらの人を選ぶかは偶然の範囲内だった。年齢の違いも影響せず、犬が人の性格や行動を理解して選ぶ力は、思ったより単純ではない可能性が示された。

この結果は、犬の社会的な認知能力について、より慎重な見直しが必要であることを示している。一方で、今回のような単純な選択テストでは犬の社会的理解力を十分に測れていない可能性もある。今後は、野良犬や介助犬、警察犬など、多様な環境で育った犬を比較するような研究が期待されている。

(写真はイメージ)