宇宙ニュートリノ放射源「ブレーザー天体」 史上初の解明

宇宙ニュートリノ放射源「ブレーザー天体」 史上初の解明

南極で行われている世界最大のニュートリノ観測実験「IceCube(アイスキューブ)」で、昨年9月に宇宙ニュートリノの反応が検出された。その到来方向などの情報を元に世界中の観測施設で追観測した結果、中心にある巨大ブラックホールをエネルギー源として非常に強いガンマ線を放つ「ブレーザー天体」が、宇宙ニュートリノとその親粒子である宇宙線を放射していることをつきとめた。この成果は米科学誌『サイエンス』7月13日号に掲載された。
 

「超高エネルギー宇宙線の起源」を探る突破口に

ニュートリノとは、中性の(=電荷を持たない)小さい粒子(=素粒子)のこと。宇宙で最も豊富な素粒子だが、電荷を持たないためほかの物質とほとんど反応しない。このため、ニュートリノの観測は非常に難しいとされていた。1987年、岐阜県の神岡鉱山地下1000mにあった世界最高精度のニュートリノ観測装置カミオカンデによって、初めてニュートリノの観測に成功した小柴昌俊氏は、2002年にノーベル物理学賞を受賞している。

さらに2012年には、宇宙から飛来する「高エネルギーニュートリノ」が南極点のIceCubeで発見され、これは長年謎に包まれていた「超高エネルギー宇宙線」の起源を探る突破口となった。しかし、これまでそのニュートリノを放射するもととなっている天体(ニュートリノ放射源天体)の特定には至っていなかった。そこで、IceCubeで検出された宇宙ニュートリノの反応が“速報”であると見立て、その到来方向などの情報を元に世界中の観測施設で追観測する新しい手法を開拓。この「マルチメッセンジャー観測」という手法で、放射源天体の特定に挑んできた。

宇宙ニュートリノの反応をリアルタイム解析するアルゴリズムは千葉大学グループを中心に開発され、同システムは2016年4月に運用が開始された。
 

史上初、世界各地でガンマ線放射を同時観測

今回観測された宇宙ニュートリノの反応は、日本時間2017年9月23日の朝5時54分、リアルタイム解析システムにより検出された。その到来方向などの情報が全世界に即時配信され、さまざまな観測施設が追観測を実施した。

広島大学の口径1.5mかなた望遠鏡は検出の20時間後に観測を開始し、ニュートリノの到来方向にある天体が可視光域で増光していることを発見。その情報を元に同大学のフェルミ・ガンマ線観測天文衛星の観測チームが観測データを解析したところ、通常をはるかに上回る輝度でガンマ線を放射していることがわかった。

東京大学でも口径1.05m木曽シュミット望遠鏡でニュートリノの到来方向に存在する複数のブレーザー天体を観測し、これまで観測したものの数倍となる増光を確認。この天体が2017年4月から活動期にあり、通常時の最大約6倍の輝度でガンマ線を放射していたことがわかった。

さらに、より高エネルギーのガンマ線に感度があるスペイン・カナリア諸島ラ・パルマ島の解像型大気チェレンコフ望遠鏡MAGICの観測により、この天体から100GeVを超える非常に高エネルギーのガンマ線が検出された。IceCubeで検出した方角・時刻ともに同期した超高エネルギーガンマ線放射が史上初めて同時観測されたことになる。
 

ニュートリノとガンマ線増光の観測は「偶然ではない」

今回、ニュートリノ観測とガンマ線の増光が観測されたのは偶然ではないかという仮説に対し、統計的な有意性を検定した結果、偶然起こる確率は0.003%程度であることが示された。さらに、過去のIceCube観測データを再調査し、この天体の方向の観測データを詳細解析したところ、2014年12月16日を中心としたおよそ160日の期間に、同天体の方向からの背景の反応数を大きく超えるニュートリノの反応が確認された。

この研究成果は、未解明の大きな謎である超高エネルギー宇宙線放射機構を理解する重要な一歩となる。今回のニュートリノの反応を起こした陽子のエネルギーはPeV(100万GeV)以上にも達すると推定されるため、このブレーザー天体は超高エネルギー宇宙線放射天体だといえる。オリオン座の左肩に位置するこの天体から約40億年前に放射されたニュートリノは、超高エネルギー宇宙線加速という宇宙でもっとも激しい現象の現場を、初めて明らかにしたことになる。

画像提供:アメリカ科学振興協会

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