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【ノーベル賞2018】生理学・医学賞受賞の本庶博士が切り拓いた、がん免疫療法とは

【ノーベル賞2018】生理学・医学賞受賞の本庶博士が切り拓いた、がん免疫療法とは

今年のノーベル生理学・医学賞が1日に発表され、米テキサス州立大学のジェームズ・P・アリソン教授と、京都大学の本庶ほんじょたすく特別教授が共同で選ばれた。「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」が授賞理由となった。本庶博士の研究成果は小野薬品工業が臨床試験を行い、がん免疫治療薬「オプジーボ」の開発に繋がった。日本人のノーベル賞受賞は2年ぶり24人目で、外国籍を含めれば計27人。生理学・医学賞では、利根川進さん、山中伸弥さん、大村智さん、大隅良典さんについで5人目となる。
 

さまざまながんの治療法

これまでがんの治療法として、外科的な手術、放射線療法、薬物療法が用いられてきた。そして第4の治療法として注目を集めているのが免疫療法だ。免疫療法には、がん細胞に対して免疫による攻撃力を高める治療法と、がん細胞によってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる治療法とに分けられるが、後者が今回の受賞に繋がった方法だ。

もともと19世紀後半から20世紀初頭にかけて、免疫による攻撃力を高めることで、がん細胞を攻撃するという前者の考えがあった。多くの科学者が基礎研究に取り組み、免疫を調節する基本的メカニズムが解明されてきた。免疫システムの基本的な性質は、「自己」と「非自己」を区別する能力であり、白血球の一種であるT細胞が鍵となっている。このT細胞の働きを高めるタンパク質と、ブレーキをかけるタンパク質とが見つけられた。
 

画期的な免疫療法の発見

1990年代、カリフォルニア大学バークレー校の研究所で、アリソン博士はT細胞の働きにブレーキをかけるCTLA-4というたんぱく質を研究していた。他の研究チームは、この機構を自己免疫疾患の治療の標的として利用した。しかし、アリソン博士はまったく異なるアイデアを持っていた。彼はCTLA-4に結合してその機能を阻害する抗体を開発したのだ。CTLA-4の機能を阻害すれば、T細胞の働きにブレーキをかける機能が阻止され、T細胞ががん細胞を攻撃する力が回復する可能性があると考えた。アリソン博士らは1994年の終わりに最初の実験を行い、結果は素晴らしいものだった。がんを有するマウスが、この抗体による治療で治癒したのだ。製薬業界の関心はほとんどなかったが、アリソン博士は人間のための治療法の開発に力を入れた。2010年に皮膚がんの一種であるメラノーマの患者に顕著な効果が認められた。いくつかの患者では、残りのがんの徴候が消失した。このような驚くべき結果は、この患者グループでそれ以前には見られなかった。

一方で1992年、本庶博士はT細胞表面にあるPD-1タンパク質を発見した。その役割を解明するため、その機能を徹底的に調査した。その結果、PD-1がT細胞の働きにブレーキをかける機能を持つが、CTLA-4とは異なる機構で作動することがわかった。動物実験でPD-1阻害剤はがんとの戦いに有望な戦略であることも示され、PD-1を患者の治療の標的として利用する道を開いた。2012年には、異なるタイプのがん患者の治療において明らかな有効性が実証された。結果は劇的であり、以前は本質的に治療不能であったとされていた転移性がん患者の長期寛解と治癒の可能性がある。
 

がん治療の革命

こうしたがん細胞によってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる治療法は、現在、「免疫チェックポイント療法」と呼ばれている。CTLA-4とPD-1という2つのうち、PD-1にピンポイントで結合する治療法は、肺がん、腎がん、リンパ腫および黒色腫を含むいくつかのタイプのがんにおいてより効果的であり、肯定的な結果が観察されている。CTLA-4とPD-1の両方を標的とする併用療法は、メラノーマ患者で実証されているように、さらに効果的である可能性がある。

このように、がん細胞をより効率的に排除するために、免疫システムの働きにブレーキをかける機能を阻害するさまざまな戦略が検討されてきた。大多数のタイプのがんに対して現在、多数のチェックポイント治療試験が進行中であり、新しいチェックポイントタンパク質が標的として試験されている。今回選ばれた2人がこれらの治療法を発見するまで、免疫療法の臨床への応用は控えめだった。しかし、チェックポイント療法は現在、がん治療に革命をもたらし、がんの管理方法を根本的に変えつつある。

画像提供:ノーベル財団

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