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熱帯地域のチンバンジーがサワガニを常食 人類の「食」に関する謎解明へ一歩

熱帯地域のチンバンジーがサワガニを常食 人類の「食」に関する謎解明へ一歩

京都大学の松沢哲郎特別教授ら日米英スイスの4カ国共同チームは、熱帯の深い森に住む野生チンパンジーが森の溜まり水にすむサワガニを捕まえて常食していることを発見した。初期の人類がどのように水生動物食を始めたか、という疑問解明につながる可能性がある。この成果は、5月29日に国際学術誌「ジャーナル・オブ・ヒューマン・エボリューション」にオンライン掲載された。

 

人類の水生動物食の起源とは

水辺に住むカニクイザルなど霊長類の20種でカニ食が知られているが、チンパンジー・ボノボ・ゴリラ・オランウータンといったヒト科の類人猿のカニ食はこれまで知られていなかった。一方で、人類はおよそ200万年前から水辺の動物を食べていたことがわかっているが、いつ、どのようにして水生の動物を食べ始めたのかは、これまでわかっていなかった。

 

西アフリカ・ギニアで調査を実施

今回、同チームは、西アフリカのギニアの世界自然遺産であるニンバ山(標高1740m)で調査を実施し、その行動を把握した。最初の発見は2012年2月25日。カニ採集をする場所を標高720~875mの4か所で発見してカメラを仕掛け、2014年4月にエボラ出血熱で退去を余儀なくされるまでに181回の撮影に成功した。チンパンジーの主食である果実の生産量を森で測った資料と比較したところ、果実のみのりの多寡とは関係なく通年でカニを食べていることがわかった。現地には雨季と乾季があるが、チンパンジーのカニ食は雨量とは関係なかった。また、ニンバ山の野生チンパンジーは獰猛どうもうなサファリアリ(サスライアリ)を棒で釣って食べるが、そのアリ釣りが少ない時期にカニをよく食べていた。栄養分析の結果、両者の栄養構成は近いことがわかった。さらに、オスとメスとで比較したところ、食べる量に性差があることがわかった。子連れのメスは1時間以上もの長い時間をかけてカニをよく食べていたが、一方オスは食べたとしてもその時間がメスに比べて短かった。

 

女性にとって水生動物食が重要だった理由

これらの結果から、初期の人類がどのように水生動物食を始めたかについて、同チームでは以下の3つの可能性が推測できるとした。第1に、これまで考えられていたような初期人類が進出した開けた場所の水辺ではなく、深い森の中ですでに水生動物食が始まっていた可能性があるということだ。400万年以上前のアルディピテクス猿人やアファール猿人のような森に暮らしていた初期人類が、森の暮らしの中ですでに水生動物の食用を始めていた可能性を示唆した。第2に、水生動物を森に住む初期人類が常食していた可能性。第3に、特に女性や子どもにとって水生動物食が重要であった可能性だ。男性は狩猟時に獣の肉を食べる機会があったはずだが、そうした機会に恵まれない女性や子どもにとって、カニ食は必須脂肪酸に加えて、ナトリウム塩やカルシウムを摂取できる貴重な栄養源だったと推測される。

(写真はイメージ)

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