小学校でプログラミング教育導入 デジタル・ネイティブ世代に必要とされるものとは?

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 後編

2020年度から小学校で必修化されるプログラミング教育について、前回はその意義について解説しました。今回は、具体的な学習事例などを中心に紹介します。

解説:吉金丈典よしかねたけのり
大阪大学・基礎工学部・博士前期課程卒業後、大手電機メーカーにて8年間プロダクトエンジニアとして勤務。エクセルVBA・C言語などを活用。現在は、そろばんLABO芽育を経営し、同校でプログラミング講座も開講している

―プログラミング教育において、STEAM教育という概念が注目されています。

コンピュータ科学における教育方針として米オバマ元大統領が掲げたもので、Science(科学)、Technology(技術)・Engineering(工学)・Arts(芸術)・Mathmatics(数学)の頭文字をとったものです。日本でもプログラミング教育において、この5つの分野に力を入れた方針を取り入れようという動きが広まっています。
―小学校での導入が確定している、プログラミング教育の学習事例について教えてください。

このたび、文部科学省(以下、文科省)が採用した具体的な学習事例としては、以下のものがあります。

(1)Scratch(スクラッチ)
スクラッチは、マサチューセッツ工科大学で開発された、キャラクターを「1歩動かす」「向きを90度変える」などの具体的な指示をブロック群でまとめた、ブロックプログラミング言語です。プログラミング学習は英語学習同様、日本語を自在に読み書きできることが前提になっており、筆者の指導の実感としては、スクラッチの習得年齢は小学2年生以降が望ましいです。

またスクラッチは、日本商工会議所主催のプログラミング検定・Entryクラスの言語として採用されており、ビジネス用途のプログラミング言語の入門としても注目されています。

(2)Viscuit(ビスケット)
メガネを使い、メガネの左右に異なる絵柄を配置し、その差で動きをつけるプログラミング学習。直観的にわかりやすい特徴があり、プログラミングで用いる素材を自分で描くことなどから、プログラミング教育・STEAMのうち、Art(芸術)の側面が強い学習ツールです。

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 後編
めがね左の△が基準、右のずらし間隔が移動方向となる。めがね左右の配置が、指示(プログラミング)となる。

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 後編
実際の動き

本ツールは、プログラミングのもつ厳密性を緩めた、幼児~小学校低学年向けとなっています。
―文科省が採用したもの以外で、有益なプログラミング学習の事例としてはどのようなものがありますか?

(3)ロボットプログラミング
現物に触れながら、感覚としてプログラミングを習得できるメリットがある学習手段です。一方で、組立て時間がかかることや、ロボットの購入・破損時などの費用面が課題としてあります。

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 後編

(4)micro:bit(マイクロビット)
マイクロビットでは、ブロックプログラミングで指示した結果が、ボードのLEDで表現されます。マイクロビットも、教育用途としての普及を前提に開発された点が(1)や(2)の言語と共通します。価格が2000円程度と安価なのもメリットです。

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 後編
マイクロビットプログラミングの様子

ブロックプログラミングができる上、外部機器として使える利点に加えてUSBケーブルの接続だけでセットが終わるため、ロボットプログラミングのような組立の手間はありません。また標準機能として、磁気センサ、加速度センサが搭載され、Bluetoothでのマイクロビット間の通信が可能であることから、「じゃんけんゲーム」のような生徒間でのやりとりも可能となり、付加価値が高いと言えそうです。

また、指示ブロックの流れが、Python、JavaScript等の言語へ変換ができるため、初学者から高度な学習を目指す人への橋渡しをする中間教材としても有望です。

(5)アンプラグド学習
コンピュータを用いず、プログラミング的思考を高める学習方法。具体的な例としては「すごろく」や「迷路」「ナンバープレース」といったものも、論理的思考を養成する一手段として有効です。ただし、紙面上の教材はコンピュータによる応答がないこと、またクロスワードパズルのように知識を要する教材は低学年の児童には向かないため、教師の教材選定と授業運びがカギとなります。
―小学校でプログラミング教育を導入するということは、教える側にも新たな知識や指導力が必要となります。

プログラミング教育の必修化により、教員が新たにプログラミング指導力を身につけることが必須となるため、教育現場では当座の人材不足が懸念されています。2024年には、大学入試にコンピュータを用いたプログラミング科目の導入も検討されています。こういった現状から、児童のプログラミング学習に対して強い関心がある方には、民間のプログラミング教室を当たってみることをおすすめします。
―プログラミング教室を選ぶ際の留意点について教えてください。

留意するべきポイントをいくつか挙げたいと思います。

(a)小学校の学習事例とマッチしている(ビスケットやスクラッチを取り入れている)かどうか。

(b)長期的かつ視野広く、情勢観を持った教師が指導しているかどうか。指導教師がプログラミング学習にとどまらず、情報モラルや、AI・ビッグデータの活用などにも知見があり、新たな社会に必要な人材像まで考えているかどうか。

(c)指導教師が、子どもの指導に慣れているかどうか。

(d)(a)と(b)を考慮した上で、不要な指導がなく成果が明確であるかどうか。

(e)「教師自身」がプログラミング技能に長けているかどうか。

(f)(a)~(e)を踏まえた上で、価格が適正かどうか。
(地域のプログラミング教室での入会金・教材費・月謝などの相場を踏まえて検討されるとよい。)

プログラミング教育は新たな試みであり、この教育を取り巻く状況も急激に変化しています。そういった事態に柔軟に対応しつつ、何よりも子どもたちの現状を注意深く観察する必要があります。中長期的な視野に立ち、子どもたちの潜在能力を最大限活かすことができるような環境を整えてあげることが理想です。このプログラミング教育を通して、日本をリードする新たな人材が育っていくことを願ってやみません。

(冒頭の写真はイメージ)

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 前編

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