小学校でプログラミング教育導入 デジタル・ネイティブ世代に必要とされるものとは?

プログラミング教室経営者が語る、小学校での必修化の現実 前編

2020年度から必修化される、小学校でのプログラミング教育。その目的や期待される成果などはいまだ不透明で、人材不足などの問題点も取り上げられています。

生まれた時からコンピュータやスマホ、インターネットがある環境で育ってきた「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる今の子どもたちにとって、プログラミング教育の導入はどんな意味を持っているのでしょうか?

文部科学省(以下、文科省)が推進するプログラミング教育の具体的な内容や現状を、プログラミング教育の現場におられる吉金丈典さんにうかがいました。

解説:吉金丈典よしかねたけのり
大阪大学・基礎工学部・博士前期課程卒業後、大手電機メーカーにて8年間プロダクトエンジニアとして勤務。エクセルVBA・C言語などを活用。現在は、そろばんLABO芽育を経営し、同校でプログラミング講座も開講している

―算数や国語と並んでプログラミング教育が小学校の必修科目になるということですが、具体的には何を習得するのでしょうか?

コンピュータは人間と違って自ら考えることができません。また、推測したり空気を読んだりすることもできないため、こちらが意図した活動を実現させるためには人間が、コンピュータが読み取れる形で綿密な指示を出さなくてはなりません。そのための指示出しを「プログラミング」と言い、この作業を行なうためにはプログラミング能力が必要となります。この能力の習得が、同教科の目的です。プログラミング能力とはすなわち、的確な指示を出してコンピュータを使いこなす能力を意味します。

―プログラミング教育を、まだこれから読み書きを覚える小学生に対して導入する理由は何ですか?

家電や自動車を始め身近なものにコンピュータが内蔵され、私たちの生活は便利で豊かになりました。一方で、コンピュータをより効果的かつ主体的に活用するために、私たちの認識の中のコンピュータを「魔法の箱」から解放し、仕組みを知り、使いこなす必要性が高まっています。今や、あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められる社会を生きていく子どもたちにとって、将来どのような職業に就くとしても、プログラミング能力、プログラミング的思考は重要となります。

―プログラミング的思考とはどのような思考でしょうか?

コンピュータに意図した処理を行わせるためには、論理的思考力が必要となります。この思考力を「プログラミング的思考」と呼びます。
文科省の要綱では、プログラミング的思考とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号をどのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と規定しています。

―プログラミング的思考を通して培われる能力にはどんなものがありますか?

同教育を通しては、おもに以下の3つの力をつけることを狙いとしています。

(1)実現可能/不可能の判断力

与えられた教材・時間の範囲内で、どれだけのクオリティのものを作れるかの判断力が培われます。
この場合、論理的な思考を習得し、「これがしたい」と目指すものを、自分でできる指令として小さいステップにまで落とし込む能力が求められます。これによって、できることと、できないことの境界線を線引きできるトレーニングを積むことになります。

―例えば、ブロックプログラミングで登場するキャラの動物に、鳴き声を出させるためにはどうしたらよいか?

この場合、プログラムソフトの機能を調べたところ、音素材はあってもイメージした音ではなかったとします。「音を出せる」ところまではわかったけれど、「イメージする音ではない」という状況です。

そこで音にこだわる児童は、さらに音専用のソフトで作曲することにもトライするようになります。一方で音クオリティにはこだわらず、より全体最適を重要視し、与えられた教材・時間の範囲内で作品を作る児童も出てきます。

(2)創造力
指導例として、例えば教師から「キャラクターを左端から右端(1000歩幅とする)まで動かそう」という指示が出され、これを「100歩×10回繰り返す」ことで実現させるとします。
この場合、以下のブロックのように「100歩動かす」を10回繰り返す動作のブロックで囲み、クリックすれば、キャラクターが結果として1000歩動くようになります。
小学校でプログラミング教育導入 デジタル・ネイティブ世代に必要とされるものとは?

しかし、「キャラクターをもっと早く動かせないか」「1000歩を超えたらいいので、200歩×6回でも、ひとまず目的は達成されるから問題ないのではないか」といった様々な提案が児童たちから寄せられることがあります。

もちろん、いずれも指示は達成できているので、こういった発想も正解なのです。児童たちが感じる、多様性に富んだ具体的な意見が、教師に受け入れられることで、児童たちの積極性や主体性、自信感へとつながり、「こんなこともできるのではないか」という新たな「創造力」が育まれる結果につながります。

(3)表現力(説得力)
(1)は裏返すと、たとえ小さいステップでも、自分で命令を形にしていかなければ目標が達成できないということになります。目標と小さいステップを図示したり、言葉で説明することが、表現力や説得力の育成につながります。

このように、未来社会を生きる上で不可欠なプログラミング教育を、小学校においてどう実現するかが一番のポイントとなります。次回は、実際にプログラミング塾で導入されている学習事例を紹介します。

(冒頭の写真はイメージ)

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