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ロカボ食や断続的な断食による減量のメカニズムを解明 東農大

ロカボ食や断続的な断食による減量のメカニズムを解明 東農大

東京農工大学の木村郁夫教授らは、低炭水化物食(ロカボ食)や断続的な断食がもたらす体脂肪の効率的な減少効果に、ケトン体とその受容体、そして食事の方法による腸内環境の変化が密接に関わっていることを明らかにした。この成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に4日付で掲載された。

ケトン体が私たちの健康にもたらす影響

ケトン体とは、飢餓時など体内にブドウ糖が枯渇した状態が生じた際に肝臓で作られ、脳や他の組織でブドウ糖の代わりに利用される。マウスによる実験結果から、低炭水化物食(炭水化物の摂取比率や量を制限した食事)や、ココナッツオイルをはじめとした中鎖脂肪酸食というケトン体が作られやすい食事、そして摂食と絶食を交互に行う断続的な断食などは、寿命の延伸、効率的な減量効果や脳機能改善など、私たちの健康に良い影響を与える可能性が期待されているが、ケトン体による影響がどのようにして起きるのか、その詳細な仕組みは不明な部分が多く残されていた。
 

ケトン体の新たな受容体「GPR43」を発見

木村教授らは今回、今まで発見されていなかったアセト酢酸の受容体として「GPR43」を新たに発見した。本来、この受容体は短鎖脂肪酸によって活性化され、生体のエネルギー代謝や免疫機能に重要な役割を果たしていることが知られている。この短鎖脂肪酸は、私たちの食事に含まれる食物繊維等の難消化性多糖類から腸内細菌発酵によって作られることから、GPR43は腸内細菌と宿主を繋ぐ重要な受容体と認識されてきた。さらに今回の研究では、体内でケトン体が上昇している環境下において、アセト酢酸によるGPR43刺激が中性脂肪の分解を促進し、脂肪の消費を優先的に進めることが明らかになった。

このGPR43は通常の状態では、腸内細菌が食事に含まれる食物繊維を分解して産み出す短鎖脂肪酸によって、腸管及び血液を介して全身で活性化されている。しかし今回の研究で、絶食や低炭水化物食、断続的な断食を行うことで腸内細菌叢に変化が生じると、この腸内細菌の短鎖脂肪酸の産生が腸管内で著しく減少することがわかった。一方で、このように体内でケトン体が上昇している環境において、血液中のケトン体は、通常の状態の短鎖脂肪酸血中濃度の10倍以上にも劇的に増加することがわかっている。すなわち、全身ではアセト酢酸を介してGPR43は活性化される一方、腸管では短鎖脂肪酸の減少によりGPR43が抑制されるという、栄養環境に依存した効率的エネルギー利用機構を明らかにした。

ケトン体とその受容体を介した減量メカニズムの解明は、栄養管理による先制医療や予防医学、さらにはケトン体受容体を標的とした代謝性疾患の治療薬の開発への応用が期待される。

(写真はイメージ)