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管理職の8割がテレワーク推進も、現場で活用されない理由は?

「生活の幸福度が下がった」が3割強 テレワーク活用の影響調査で

慶應義塾大学とNIRA総合研究開発機構は17日、新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方や生活・意識などにどういった影響を及ぼしているかの調査結果を速報した。その結果、2020年3月時点のテレワーク利用率の全国平均は10%で、特に東京圏での利用が高いことがわかった。

また、感染拡大前の1月と比べ、就業者の2割以上が労働時間や所得、幸福感が減少したと回答するなど、3月時点ですでに様々な社会経済的な負の影響が見られた。この調査は4月1日〜7日に行われ、回答者数は合計1万516人。
 

首都圏で高まるテレワーク、通信情報業で顕著

もう少し詳しく見ていくと、全国の就業者のうち、3月時点でテレワークを「利用していなかった」、あるいは「該当しない(自営業主等、通常の職場と自宅が同じ)」との回答が90%だった。テレワーク利用率を就業者の居住地でみると、全国平均の10%を上回っていたのは東京都21%、神奈川県16%、千葉県14%、埼玉県13%の4都県のみで、いずれも東京圏での利用率が高かった。2月~3月にかけてのテレワーク利用率の増加幅も東京圏が高かった。また、企業の規模別にみると、テレワーク利用率が最も高いのは従業員が500人以上の職場で16%。1~4人の職場も9%と比較的高かった(ただし、自営業主の利用率は10%、自営業主以外の利用率は8%)。5人以上の職場では、規模が大きくなるにつれ利用率が高くなり、100~499人の職場で10%だった。一方、官公庁は最も低い水準で4%だった。産業別では、高い順に「情報サービス・調査業を除く通信情報業」が27%、「情報サービス・調査業」が23%、「製造業(出版、印刷を含む)」が14%、「金融・保険業」が13%だった。低い方をみると、「運輸」5%、「公務(国家公務、地方公務)」4%、「飲食業・宿泊業」4%で、最も低いのは「医療・福祉」2%だった。

テレワークではなく通常の職場で勤務していると答えた就業者数は、3月時点と1月時点ではどちらも8400人台でそれほど変わらなかった。しかし、「週5日以上」と回答した割合は3月時点で71%となり、1月時点の75%に比べるとやや減少している。一方、テレワークと回答した人数は3月時点で1030人と、1月時点の701人から増加した。その勤務頻度をみると、テレワークの場合は、「週5日以上」から「月1~3日」までばらつきがあるが、1月時点と3月時点で比較すると、「週2日」以上の割合が総じて増加した。なかでも、「週5日以上」と答えた人の割合は1月に21%だったのが3月に27%と大きく増加した。これらのことから、通常の職場での勤務を「週5日」行う働き方から週2日以上のテレワーク勤務に移行していることがうかがえる。
 

3割強の人が生活全体の幸福感が低下

仕事や生活に関わる変化は、1月に比べて3月に労働時間が減少した人は23%。所得が減少した人も23%。また仕事全体の満足感が下がった人は26%、生活全体の幸福感が下がった人は36%と、3月時点ですでに様々な社会経済的な負の影響が見られる。労働時間が減った人の44%は余暇時間が増加し、38%は変化なく、18%は余暇時間も減少した。労働時間が減った人も増えた人も、約25%は家事・育児・介護の時間が増えたが、労働時間に変化がない人で家事・育児・介護の時間が増えたのは7%だけだった。労働時間が減った人のうち、仕事全体の満足感が減少した人は60%、生活全体の幸福感が減少した人も59%いた。その割合は、労働時間に変化がなかった人(各々14%と28%)や増加した人(各々31%と39%)と比べて高い。労働時間が減った人のうち、仕事全体の満足感、生活全体の幸福感が増加した人は5%だった。一方、労働時間が増えた人のうち、仕事全体の満足感が増加した人は26%、生活全体の幸福感が増加した人は20%だった。年齢層と性別で見た場合、どの年齢層でも労働時間や仕事総量が減った人が20%以上いるが、10~20代の女性が29%ともっとも高く、次いで30台の女性が27%だった。また、所得が減ったのも10~20代の女性で27%、30台の女性が27%と高いが、65歳以上の女性が28%と最も高かった。さらに、どの年齢層でも仕事全体の満足感が減った人が20%以上いるが、10~20代の女性の満足感の減少が35%と最も大きかった。
 

ICT環境整備が課題、仕事への悪い影響も

テレワークを利用する上で障害になった項目として、もっとも高いのは、「自分の職種や業務に合わない」で39%となった。次いで、「外部から会社・事務所のサーバーやシステムへアクセスが許されていない」が26%、「情報セキュリティ情報管理に対する不安がある」は25%、「資料・書類がデータ化されていない、あるいはできない」は25%、「PC、プリンター、机など、自宅に仕事をする環境が整っていない」は25%など、ICT環境を障害に抱える人が多いのが目立つ。

仕事への影響をみると、新型コロナウイルスの感染拡大により、何らかのトラブルがあったと回答した就業者は43%だった。その内訳をみると、「予定していた仕事をキャンセル・延期された」が最も多く、トラブルがあったと回答した就業者の61%に該当する。次いで、「仕事の見直しや業務の縮減を行った」は25%、「仕事相手(顧客、同僚)と連絡がとりにくくなった」は21%だった。トラブルのあった割合を産業別にみると、「飲食業・宿泊業」が58%ともっとも高く、次いで「教育・学習支援業」が57%だった。

(写真はイメージ)