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10代の心身の悩みに寄り添う「思春期外来」医師インタビュー

10代の心身の悩みに寄り添う「思春期外来」医師インタビュー

心身共に子どもから大人へと大きく転換する思春期。この時期は体の成長に心の成長が追いつかず、不安定な気分になりがちだと言われています。上野皮フ科・婦人科クリニック(東京都台東区 院長 西郡克之)は、こうした思春期特有の悩みを抱える10代の女性を対象に「思春期外来」の診察を行っています。

悩みを抱えながらも友達や大人に相談しづらく、我慢してしまう人も多いことから、女性医師が相談に乗ったり、患者さんの意志を尊重しながら治療方針を決めたりするなど、婦人科を受診することに不安を感じる若者たちが気楽に相談できるような環境づくりにも取り組んでいます。

今回は、同クリニックの思春期外来を担当する女性医師の方々に、思春期外来をどのように利用すればよいのか、お話を伺いました。
 

ー思春期外来とはどのような外来なのでしょうか。

女性は一生を通じてホルモンの変化でダイナミックに心身共に大きく変化する転換期があります。その一つが「思春期」だと思います。「自分が普通なのか?」「普通って何か?」「これっておかしいのかな?」「病院に行った方がいいのか、行くほどでもないのか」など、身体の変化も多く、いろいろ気になる年齢です。大人になるとそれなりに身体についての知識が身についてきたり、周りの人から体験談を聞いたりする機会も増えてきますが、思春期は知識や体験談が偏っていたり不足していたりして、正しく知らないことによる不安がある年代だと思います。

大人からみたら「たいしたことない」「気にすることない」「当たり前のこと」と思うことでも、思春期にある当事者は悩むことがあります。痛みの感じ方などにも「個人差がある」ということも、言葉では簡単に言いますが、「他人と比べてどうか」ということも気になるかもしれません。例えば、生理痛もどれぐらいなら様子を見ていてもよくて、どれぐらいなら薬を飲むほうがいいのか、というのも、他人となかなか比べられるものではありません。身近な大人、例えばお母さん、姉妹、友達に聞いて解決できることであればそれもよいことですが、是非一度は、医師などのプロフェッショナルを頼っていただきたいと思います。

当院の「思春期外来」は、曜日や時間帯などは特に決まっていません。また当院は院長が皮膚科、形成外科、アレルギー科を担当しているので、皮膚科等にいらっしゃる女子学生さんもたくさんいらっしゃいます。歯医者さんや内科、眼科にかかる時と同じような感覚でいらしていただきたいと思っています。
 

ー若者が受診しやすいように工夫されている所はありますか。

若者が婦人科を受診しづらく感じる理由の一つに、待合室で待っている間に周囲の人からじろじろ見られるのが嫌だ、ということがあるようです。「こんな若い子が産婦人科に来るなんて、妊娠でもしたのかしら?」と思われているのではないかと感じてしまうそうです。その点で、当院は「婦人科」ということで、お腹の大きな妊婦さんは基本的に通院されません。他の方の視線が気になるという方向けには、待合室内に他の方からは見えにくいようなゾーンも作っていて、そこで問診票を書いていただくこともできます。来院時には、保護者の方といらしていただいても、ご友人、もちろんお1人でいらしていただいても構いません。

ドクターたちも緊張していらっしゃる若い方には、特に配慮をして診察をしています。婦人科と聞くと、すぐに婦人科的な診察いわゆる内診をされる、というイメージが強いかもしれませんが、10代の方で初診からそういった内診が必要な場合はさほど多くない印象です。急激な腹痛などの場合には、ご本人に説明して無理のない範囲で行うことがほとんどです。

10代の心身の悩みに寄り添う「思春期外来」医師インタビュー
他の人から見えにくいように配慮した待合室内の写真
 

ー最後に、思春期にある若者たちに向けてメッセージをお願いします。

婦人科は、大人でもなかなか受診しづらいと感じる方も多いので、若い方がいらっしゃるにはさらにハードルが高く、気になることが多いと思います。最初は勇気がいるかもしれませんが、一度足を運んで診察を受けてみると、婦人科はこんなところで、こういう診察をしていて、こんな先生がいるんだな、ということが分かっていただけると思います。
「今日はちょっと話を聞いてみたいと思って来た」「どんな検査をするのですか?」など、
気軽に質問していただきたいと思います。

「普通」が何か、というのはなかなか分かりません。本人が痛いと思っているのならば「痛い」と、またつらいと思っていることは「つらい」と、そのままの思いを気軽に相談していただけたらと思います。気軽に、と言っても、それもなかなか難しいかもしれませんが、診察にいらっしゃるまでに迷い、相当勇気がいったかもしれないということも、ドクター達は受け止めてくれますよ。
 

【取材後記】
今回お話をうかがう中で「普通が何かはわかりにくい」という言葉が印象に残りました。経験の少ない思春期世代は、性の問題をはじめ、さまざまなことに対して「自分は普通なのか」「普通は何か」という問題に悩むことが多いのではないでしょうか。10代の若者たちが「普通」かどうかに悩むのではなく、「自分」はどうかを大切にするようになって欲しい、思春期外来の受診がそのきっかけになればと思いました。
 

また同クリニックは、昨年12月、院長と担当の女性医師達がQ &A形式で10代の性の悩みに答える『10代の[性の悩み]白書』を出版しました。若い女性だけでなく、男性の悩みや10代の子どもを持つ保護者の方向けのアドバイスも掲載されています。

10代の[性の悩み]白書
10代の[性の悩み]白書
著者:思春期外来 in 上野皮膚科・婦人科クリニック
発行日:2020年12月18日
発行:扶桑社
 

10代の心身の悩みに寄り添う「思春期外来」医師インタビュー

上野皮フ科・婦人科クリニック
http://www.uenoderma.jp/

画像提供:思春期外来 in 上野皮膚科・婦人科クリニック
(冒頭の写真はイメージ)