マイクロサイズの分子ロボットの群れが物質輸送 世界に先駆け開発に成功

北海道大学大学院の角五 彰(かくご あきら)准教授らの研究グループは、群れとしてふるまうマイクロサイズの分子ロボットで世界に先駆けて物質輸送に成功した。この成果は、4月21日にサイエンス・ロボティクス誌にオンライン掲載された。

自然界で鳥や魚、昆虫などが「スウォーム」と呼ばれる群れを成すことを参考に、多くの単純なロボットが相互作用しながら群れとして行動する「群ロボット」の研究が注目を集めている。作業の分担やリスク対応、また環境に適したフォーメーションが可能となるため、これまでにも磁場や電場、光のエネルギーを動力源とするマイクロサイズの群ロボットが開発・提案されてきたが、サイズの小ささ故、実効的なタスクの遂行には至っていなかった。

今回、可視光や紫外光で群れの形成と離散を遠隔操作できる分子機構を導入することで、分子ロボットによる物質輸送に成功した。作成した分子ロボットは直径25ナノメートル、全長は5マイクロメートル(髪の毛の20分の1)程度のサイズで、駆動系としてモータータンパク質、制御系としてDNA分子コンピュータ、センサー系として光を感知するフォトクロミック色素を組み込んだ。こうした基本ユニットを備えた分子ロボットを約100万体作成した。輸送対象として、直径数マイクロメートルから数十マイクロメートルの様々なサイズのポリスチレン製のマイクロビーズを用意し、ビーズ表面にもフォトクロミック色素を導入して光照射による結合解離機構を持たせた。

まず作成した分子ロボットが可視光を照射すると群れを形成し、紫外光を照射すると離散することを確認した。次にマイクロビーズを積荷とした物質輸送を分子ロボット単体で試みた結果、3 マイクロメートル程度までのビーズが可視光を照射することで捕捉・運搬され、紫外光を照射することで放出された。分子ロボットの群れで試みた結果、単体時と同じく可視光を照射することで捕捉・運搬され、紫外光を照射することで放出されたが、輸送可能なビーズのサイズは30マイクロメートルと単体時に比べて10倍に拡大した。さらに3マイクロメートルのビーズを対象に、分子ロボット単体と分子ロボットの群れによる輸送を比較したところ、群れによる輸送では 5 倍ほど効率(輸送距離と輸送量)が向上することも明らかとなった。また照射する紫外光の照射位置を指定することで、ビーズを任意の場所に集めることにも成功した。輸送の空間精度も30マイクロメートル以下と誤差も極めて少なかった。

5年後には、医療現場での薬剤送達や環境保全のための汚染物質回収、分子発電素子(化学エネルギーから電気エネルギーを作り出す微小な発電機)や微量検出素子(微量な核酸情報や病原体などを濃縮し検出するシステム)、マイクロリアクタ(分子ロボットによるナノ部品の組み上げ工程や化学プラントなどのシステム)といった応用例が期待されている。

分子ロボットの群れによる物質輸送の概念図(上)と実際に物質を輸送している分子ロボットの蛍光顕微鏡写真(下)

画像提供:北海道大学(冒頭の写真はイメージ)