海藻類のCO2固定能力の試算に成功 長崎大・琉球大・理研

長崎大学、理化学研究所、琉球大学は25日、海水中の溶存酸素量の計測データを用いた解析手法を活用し、海藻類によるCO2固定能力の試算に成功したと発表した。海藻類によるCO2削減の評価精度の向上に寄与できる。この研究成果は科学雑誌「Frontiers in Marine Science」に掲載される予定。

近年、海産植物や海藻の光合成能力におけるCO2吸収効果と炭素固定・貯蔵効果が注目されている。森林などの陸域で吸収・貯蔵されている炭素をグリーンカーボンと呼ぶのに対し、海域のものをブルーカーボンと呼ぶ。

海藻類は陸上植物に比べて炭素固定能力が高く、CO2削減に大きな期待が持たれている。そのために海藻養殖場を支持する動きがあるが、そのCO2固定能力を適切な手法で計測した調査事例はこれまでほとんどなかった。

長崎大学、理化学研究所、琉球大学の研究グループは、天然藻場と磯焼け海域(長崎県)、海藻養殖場(宮城県松島湾と岩手県広田湾のワカメ養殖場、沖縄県本部町のオキナワモズク養殖場)の自然環境下における溶存酸素量を継続して記録。これから炭素固定能力をこれまでの事例よりも高い精度で推定した。

調査した結果、長崎県の天然藻場と宮城県のワカメ養殖場は調査期間の半分以上で炭素固定を成していた。沖縄県オキナワモズク養殖場や岩手県ワカメ養殖場は炭素固定を成す日数が比較的少なかったが、これには地域差や生産過程が関係していると考えられる。

特に、オキナワモズク養殖はサンゴ礁の中で行われるため、サンゴ礁の豊富な生き物の影響によって固定日数が少なくなったと考えられる。

収穫したワカメとオキナワモズクの炭素含有量の測定結果から、調査した養殖漁場の合計5.2km2の面積における炭素固定量は約44トンと試算された。

同グループは、今回の研究で、海藻類の炭素固定による「ブルーカーボン効果」の定量化を実現し、海藻養殖や藻場保全が有する温室効果ガス削減効果の評価に寄与する知見を得ることができたとした。また、今後の海藻養殖の炭素固定の定量化による海藻産業の付加価値向上や、新産業創出への活用が期待できるとした。

 

岩手県広田湾におけるワカメ養殖(左)、長崎県新上五島町の天然海藻群落(中)、沖縄県本部町のオキナワモズク養殖(右)

地域ごとの生産シーズンにおける炭素固定として機能する日数の割合(グラフ中:ガラモ場 海藻が生い茂る場所の中でも、褐藻類のホンダワラの仲間が生育している場所のこと)

画像提供:琉球大学(冒頭の写真はイメージ)