消費者教育や金融教育などを扱う、高校の新科目「公共」が今春開始

2022年4月1日に成年年齢が18歳に引き下げられたが、これに伴って、高校3年生では、同じ教室内に成年と未成年とが混在するという状況が生じるようになった。今、高校の教育現場で起きていることについて、2022年4月から授業が始まった高校公民科の新科目「公共」とあわせて解説する。

同級生でも17歳(未成年)と18歳(成年)では事情が違う

成年年齢に達すると、一人で有効な契約を締結できるようになる。その一方、大人として扱われるため、未成年者取消権を行使できなくなる。未成年者取消権とは、未成年者が保護者の同意を得ずに締結した高額な契約を取り消すことができる権利だ。

例えば、同級生と同じものを契約した際に、一緒に契約したのにもかかわらず、18歳になった生徒だけが不利を被るという事案が発生しうる状況になっているのだ。

この未成年者取消権の失効により、今後多くの若年層が消費者トラブルに巻き込まれる可能性が懸念されている。

成年年齢引き下げに向けた高校生向けリーフレット(法務省ホームページより)

新科目「公共」とは?

高校では、2016年に実施された選挙権年齢の18歳への引き下げと相まって、「大人である18歳になるまでに、どのような資質・能力を身につけておくことが必要か」との観点から家庭科や公民科の学習内容が整理され、さらに従来の「現代社会」に代わり新科目「公共」が設置された。

新学習指導要領で「公共」は、高校1年または2年のうちに必ず履修する科目として新設されている。「公共」は、現代社会の諸課題の解決に向け、自己と社会との関わりを踏まえ、社会に参画する主体として自立することや、他者と協働してより良い社会を形成することなどについて、生徒の日常の社会生活と関連付けながら具体的に考察する科目、とされている。

授業では消費者教育や金融教育、職業選択、雇用、少子高齢社会における社会保障、安全保障や国際貢献、地球環境や資源・エネルギー問題など、現代的なテーマを幅広く扱う。

自立した一人の大人として考え、決断する力を身につけることを目的としており、知識提供型の受け身の授業だけではなく、グループワークやディベートなど生徒自身が主体的に取り組みながら理解を深める、「アクティブ・ラーニング」の形式で授業を行う。

ネットショッピングの落とし穴や、インターネット上の事実とは異なる情報に関するトラブルなど身近に存在する具体的な事例を扱いながら、どのような対応をするべきかを考えてみるなどの授業内容が想定される。

生徒が自分事として主体的に考えられるような授業設計が求められる、新科目「公共」。これから、どのような授業がそれぞれの教室で繰り広げられるのだろうか? 新しい学びに対応する教員の養成や教材開発が期待される。

(冒頭の画像はイメージ)