4月から18歳成人 成年年齢の引き下げで何が変わる?

民法の改正により、202241日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。これにより、200242日から200441日に生まれた18歳・19歳の約100万人は、41日をもって新成人となり、以降は18歳の誕生日を迎えると同時に新成人となる。

今回、明治時代以来、約140年ぶりに成年の定義が見直されたのはなぜなのか、またこれによって何が変わるのか。その背景や留意すべき点について解説する。

背景~若者の積極的な社会参加を

議論の発端となったのは、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の成立だ。憲法改正には国民投票で過半数の賛成が必要とされている。若者の積極的な社会参加を促す観点から、2007年に国民投票法が投票権者を18歳以上としたため、選挙権年齢や成人年齢についても検討の機運が高まった。そして2016年、選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる法改正が行われた。

国際的に見ても、国民投票や選挙の投票年齢を成人年齢と一致させている国が多く、18歳を成人年齢とするのが一般的なため、今回の民法改正に至った。

解説~成年年齢引き下げで「変わること」「変わらないこと」

民法上では成年年齢は、「一人で契約をすることができる年齢」という意味と、「父母の親権に服さなくなる年齢」という二つの意味がある。

今後は、18歳になると親の同意を得なくても、自分自身の意思で、以下のようなことができるようになる。

<変わること>

  • 携帯電話の契約
  • 一人暮らしなどの部屋の賃借
  • クレジットカードの発行
  • ローンの契約
  • 証券口座の開設
  • 10年有効のパスポートの取得
  • 公認会計士や司法書士などの資格の取得

また、女性が結婚できる最低年齢は16歳から18歳に引き上げられ、結婚できるのは男女ともに18歳以上となる。

一方、健康面への影響や非行防止、青少年保護等の観点から、以下については20歳以上のまま現状維持となっている。

<変わらないこと>

  • 飲酒
  • 喫煙
  • 競馬などの公営競技

ところで、「18歳成人」で気になることの1つが、「成人式はどうなるのか」ということだろう。2023年1月の成人式は、18・19・20歳の3世代同時に実施するのだろうか? 

この疑問点について、法務省が2021年12月から2022年1月にかけて「成年年齢引下げ後の成人式の実施に関するフォローアップ調査」を行った。

その調査結果によると、ほとんどの自治体が法改正後も「成人式は20歳のままにする方針」であることがわかった。18歳は高校3年生の1月という受験シーズンにあたるため、配慮が必要だ。

留意点~当事者たちからは不安の声も

今回新たに成人となる18歳と19歳の計1034人にNHKがアンケート調査を行ったところ、「成人になることに不安を感じている」と答えた人は5割近くに上った。不安に思うこととしては「実感がない」が48%と最も多く、次に「マルチ商法などに関するトラブル」が34%と続いた。

なお、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で定められた「未成年者取消権」によって、その契約を取り消すことができる。この権利は未成年者を保護し、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしているため、成年年齢引き下げに伴い、今後18歳以上は行使できなくなる。

今後、社会経験に乏しい新成人を狙った悪徳商法などの増加による、消費者被害の拡大などが懸念されることから、各省庁では注意喚起や啓蒙活動に力を入れている。

消費者庁は「18歳から大人」特設ページで啓発動画などの情報を公開するほか、消費者教育に関する情報を共有するポータルサイトを開設している。また政府広報は、人気アニメ「東京リベンジャーズ」とコラボして啓発を行うなど、さまざまな取り組みが進められている。

18歳への成人年齢引き下げにより、さまざまなことが自分一人でできるようになり、可能性が広がるだろう。ただ、その一方で、自身の判断や選択に責任が伴うことを忘れてはならない。新成人のみならず、誰もが「よく考えて分別する」という基本に、今一度立ち返る機会になりそうだ。

(冒頭の画像は、内閣府大臣官房政府広報室制作の成年年齢引下げポスターの一部)