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黒焦げの教室が当時を物語る 震災遺構〜石巻市立門脇小学校

宮城県石巻市に2つある震災遺構のうちの一つ、門脇小学校。ここは約800m南には海、約600m東には旧北上川が流れており、2011年の東日本大震災当時、津波と津波火災の被害にあった。今年の4月から震災遺構として一般に公開されており、後世に教訓を伝えている。

新築の住宅に突然現れる窓のない校舎。震災当時は地震の1時間後に津波が到達し、その後、漂流物が発火して発生した火災によって、黒焦げになった。時間が経つとともに外壁は白く戻ったという。

受付を通って、最初に目に入ってきたのはぐしゃっとつぶれたポンプ車両。石巻市消防団牡鹿地区第7分団のものだが、当時は車両を出そうとしたがシャッターがあかず、襲来した津波に流されて南東方向に訳60m地点で大破した状態で発見されたという。

黒焦げになった教室の椅子と机。火災の影響で机といすの木の部分は焼失し、枠だけが残っている。

天井がなくなり、黒焦げた廊下

当時、小学校には教職員と児童がいた。児童は地震の後、避難訓練どおり徒歩で裏の日和山の女子高に避難。その後、近くの神社で保護者に引き渡されたという。

校庭に避難してくる住民の誘導のために残った教員4名は、津波が押し寄せたときは住民とともに校舎の屋上にいた。津波からは免れられたが、火災が燃え移ったら校舎は危ないと考え、津波の高さより上の2階から裏山にわたる方法を模索した。

黒板の下にある教壇を数人で運び出し、橋として使い、校舎から脱出。その教壇はすぐ後に、下にいた人たちが土手を這い上がるのにも使われたそうで、2回も人々の命を救うのに使われたのだという。

下の写真は教壇の橋が作られた2階と裏山へ続く茂みの部分。

体育館には応急仮設住宅が再現されている。

市民の書いた詩や被災した生徒や教員の感じた言葉も展示されており、飾らない生の言葉が当時の様子をリアルに表している。

門脇小学校の前は、震災前には住宅が広がっていたが、現在は石巻南浜津波復興祈念公園となっている。その奥は海。

門脇小学校は震災以前から避難訓練を丁寧に行っていた。また学年を超えた縦割り活動によって上級生と下級生の関係性ができており、また日常的に先生の指示がとおりやすい生活指導がなされていた。そのため、避難時も落ち着いて行動し、上級生が靴を履いていない下級生を自然とおぶって歩くなど、助け合えたという。

残念ながら学校から帰宅していた児童数名は命を落としたが、日常的な心掛けや生活が緊急時の行動に結びつくという教訓を得られる場所となっている。

<施設概要>

石巻市震災遺構門脇小学校

所在地:宮城県石巻市門脇町四丁目3番15号

アクセス:石巻駅バス乗り場「2番」より約12分、三陸縦貫自動車道「石巻港IC」より車で約15分

開場時間:午前9時から午後5時まで

入場料:大人600円、高校生300円、小・中学生200円