早大がロボット搭載ギヤの超高分子量ポリエチレン化での軽量化を実現 従来比約90%

早稲田大学は27日、ロボットに搭載する超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)製の軽量・低摩擦のギヤを開発し、金属ギヤに変えることにより従来比で約90%の軽量化に成功したと発表した。軽量化の他にもエネルギー消費低減、オイルレス駆動によるメンテナンスフリー、低騒音効果などがもたらされ、社会に受け入れやすいロボットの実現が期待できる。この研究は米国電子電気学会(IEEE)発行の『IEEE access』に19日(現地時間)に掲載された。

ロボットの動作時のエネルギー消費のほとんどはモータ電力であり、ロボットが大型化・重量化するほど増加する。消費エネルギーを削減するためには軽量化が重要となる。フレームを軽量化するために近年では高強度なプラスチックや炭素繊維強化プラスチックが使用され始めている。さらに最近ではロボットの関節を駆動するギヤの軽量化も進められていて、軽量で成型しやすいプラスチック歯車の利用が広がっている。

早稲田大学などの研究グループは、軽量、高強度、低摩擦という特徴を持つ超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)に着目した。ポリエチレンの化学構造はエチレンの繰り返し構造だが、UHMW-PEではそれが非常に長く、分子形状は分岐の少ない直鎖状になる。長い分子鎖が多くの絡まりを作って、応力に対して高い強度を持つ。また炭素原子と水素原子のみからなる化学構造のため、軽量で対薬品性に優れている。

従来の金属ギヤに置き換えるUHMW-PE製のギヤの材料は三井化学が提供した。形成したギヤの重量は従来の金属ギヤに対して約89%の軽量となった。ロボットの指部にそのギヤを組み込んで関節を動かした際の消費エネルギーの比較を行ったところ、3%のエネルギー消費低減を達成したという。

ロボットの多くのギヤを交換するだけでエネルギー消費を低減できるという成果は、様々なロボットに利用可能である。また、エネルギー面の他にも、低摩擦のために潤滑油を全く必要としないオイルレス駆動を可能にしたり、走行時の騒音を低減したりする利点がある。

課題としては、プラスチック材料の強度は金属より劣るため、そのまま置き換えが可能なのは低負荷な部分に限られることだ。今後は技術開発をさらに進めて、他の部位にもUHMW-PE製ギヤを搭載して、より高負荷・高速でのエネルギー消費の低減効果の検証を進めていくという。

画像提供:早稲田大学(冒頭の写真はイメージ)