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元社員を再雇用「アルムナイ採用」 人材獲得の新たな手法に

離職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」が増えている。「アルムナイ」とは卒業生や同窓生を意味する言葉で、人事においては組織の離職者や退職者を指す。慢性的な人材不足が続く中、アルムナイネットワークの活用が注目されている。

国内のアルムナイ採用の現状

アルムナイ採用やカムバック採用と呼ばれる採用形態は海外では珍しくないが、国内でも転職者が増えていることを背景に、2020年ごろから大企業を中心に広がり始めた。導入企業は、トヨタ自動車、中外製薬、みずほフィナンシャルグループなど多業界に渡り、味の素や三菱電機は1月から、離職者との継続的なつながりを構築するためのアルムナイネットワークを新たに開設している。

アルムナイ採用のメリットとして、スキルや経験を持つ人材を採用することで人手不足を解消することや、再就職者が社外で培った知識や経験を還元すること、オンボーディングコストを削減することなどが見込まれる。

リクルートが2023年に全国の人事担当者に実施した調査によると、アルムナイネットワークの構築に取り組んでいる企業は、取り組んでいない企業と比較して、従業員エンゲージメントが高い傾向にあることも明らかになった。

画像提供:ハッカズーク

アルムナイネットワーク活発化のために

一方、アルムナイネットワークの運用サービスを提供するハッカズーク(東京都新宿区)は1月24日、パーソルワークスデザイン(東京都豊島区)と提携し、退職者の本音を引き出すことで組織課題の可視化を支援し、離職率を改善する取り組みを強化することを発表した。退職前に従業員と組織の関係を改善することは、退職後もアルムナイとして関係を継続する上で重要な要素となるためだ。

画像提供:パーソルワークスデザイン

また、新卒対象スカウト型サービスを提供するABABA(大阪府吹田市)は13日、企業が新卒採用時の候補者に再度アプローチできるサービス「ABABAアルムナイ(アバクル)」をリリースしたことを発表した。同サービスは、新卒採用の最終面接で不採用となった人材や内定辞退者に対して、第二新卒や中途採用のタイミングでスカウトできる仕組みだ。入社前から「アルムナイ」としてネットワーク化し、人材の獲得を狙う企業も増え始めている。

アルムナイネットワークの活発化により、ネガティブな印象を持たれがちな離職者が、貴重な人的資本として見直され始めている。企業側は、在職中から従業員といかに良好な関係を築き、離職を抑制すること、さらに退職後もそれを継続することなどが、今後の課題となりそうだ。

(冒頭の写真はイメージ)