月面で水資源を見つける新方法発表 月の水の起源解明に一歩前進 

立命館大学や京都大学などの研究者らが、月面での水資源を探る新しい方法を発表した。月の表面から漏れ出してくる中性子の測定を組み合わせることで、地下にある水の量と深さを同時に知ることができ、将来の月面探査に役立つことが期待される。9月6日に国際学術誌「Planetary and Space Science」に掲載された。

月面での水探しは、宇宙探査や惑星科学の分野において非常に重要だ。月の北極や南極にあるクレーターには、「永久影」と呼ばれる常に太陽の光が当たらない場所がある。そこでは低温が保たれているため、表層下に水が氷として存在している可能性がある。

もしも月面に水が見つかれば、地球から運ぶ必要がなくなり、現地で採掘して利用することができる。水は飲料や洗浄に使うだけでなく、水素と酸素に分解することで水素燃料と呼吸用の酸素としても使うことができ、人類の宇宙進出に大きく貢献することだろう。また、月の水の起源はまだ解き明かされておらず、地球の水の起源とも密接に関係すると考えられる。このため、月の水の起源を解明することは、地球での生命環境の形成を知る上でも重要な手がかりとなるとされている。

今回の研究で同研究者らは、銀河宇宙線が月面に衝突した際に飛び出て来る中性子を月面ローバーなどに搭載した装置で測定することで、地下の水資源を非接触で調べる方法を検討している。通常は飛び出してくる中性子は大きなエネルギーを持っているが、地中から月面までの間に水が存在すると中性子は大きくエネルギーを失う。そこで、地下の水資源の広がり具合などに応じて、飛び出てくる中性子の量やエネルギーがどのように変化するかを、詳細にモンテカルロ・シミュレーションで繰り返し数値計算した。
その結果、地下に隠された水の存在量や深さを推定できることがわかったという。

また、日本国内でもエネルギーの異なる中性子を、月面探査では背景の雑音となるガンマ線と区別して測定することができる、新しい放射線モニタの開発が進んでいる。具体的には実際に月面ローバーに搭載して月の水資源を探査する放射線モニタ「MoMoTarO」(Moon Moisture Targeting Observatory)の開発が進んでおり、これは2026年に国際宇宙ステーションでの宇宙実証試験を目指している。

 

銀河宇宙線が月面下で発生させる中性子がエネルギーを失いながら表面から漏出する様子の模式図

画像提供:京都大学(冒頭の写真はイメージ)