推定約7000年のサンゴ群体を太平洋深海で発見
琉球大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)は10月25日、南日本の深海において非常に大型で寿命が長いと推定されるツノサンゴ目サンゴの群体を発見したと発表した。この群体の年齢は約7000年と推定されて、地球上で最も長寿な生物の一つである可能性がある。この研究成果は海洋生物学の国際学術雑誌に掲載された。
2020年に自然環境保全法に基づき、初めての沖合海底自然環境保全地域が4地域指定された。これは現在ある知見を基に自然環境が優れた状態を維持していると認められる海域について一定の広がりをもって指定を図ったものである。
このうち西マリアナ海嶺・中マリアナ海嶺北部海域には多数の海山(海底から1000m以上隆起している海中の地形)が存在し、多様な海洋生物が集まる重要な生態系の拠点となっている。特に、ツノサンゴ類を含む大型の刺胞動物は、生物多様性の高い底生生物群集の基盤となり、深海の「海洋動物の森」として知られている。しかし、その実態は十分に把握されておらず、さらなる研究と保全が求められていた。
研究チームは、JAMSTECの海底広域研究船「かいめい」とその搭載機器である無人探査機を用いて、西マリアナ海嶺の 525 メートルの深海で、ツノサンゴ類の巨大な群体を発見した。群体は幅4.4m、高さ3.1mで、過去の研究による推定成長速度(0.02 mm/年)を基に計算すると、その年齢は約 7000年と推定され、地球上で最も長寿の海洋生物の一つである可能性を示した。
今回の発見は、ツノサンゴ類のような長寿命な生物を含む深海の生態系において、いったん生物が失われてしまった場合、生態系の回復に非常に長い時間がかかることを示している。これを受けて、海洋保護区の適切な管理や違法漁業からの保護に向けた対策を強化することが望まれるとのこと。
今後は他の海山で同様の調査を続け、さらなるサンプル・データ収集を行い、海洋生態系の保全活動と持続可能な深海資源利用に資する予定だ。
画像提供:琉球大学(冒頭の写真はイメージ)