AIの深層学習と自然界の法則に共通性を発見 東大など

東京大学と株式会社アイシンの研究チームが、人工知能(AI)の中核技術である「ディープラーニング(深層学習)」に自然界にも見られる共通の法則を発見した。この成果は、AIの仕組みをより深く理解する手がかりとなり、今後のAI設計にも役立つと期待される。7月18日付けで米国の科学誌「Physical Review Research」で報告された。

ディープラーニングの土台となる「ディープニューラルネットワーク(DNN)」は、人間の脳のように情報を何段階にもわたって処理するAIの技術だ。画像認識や音声翻訳などで広く使われているが、その仕組みはとても複雑で、「なぜうまく働くのか」を理論的に説明するのは難しいとされてきた。

今回の研究ではDNNの仕組みを、気体のふるまいや磁石の性質などを研究する「統計物理学」の考え方を使って分析した。特に、DNNが情報を伝える仕組みが、「ある境界」をこえるかどうかで変化することに注目した。これは、森林火災や感染症など、一度「吸収状態」と呼ばれる動きの止まった状態に入ると、そこから回復できない現象とよく似ている。

研究チームは、DNNの設計に関わる「深さ(層の数)」「幅(ニューロンの数)」「スケール因子(数値の大きさ)」という3つの要素が、どのように影響し合っているのかを調べた。その結果、たとえば深さとスケール因子をかけた値が同じなら、DNNの性能もほぼ同じになることが分かった。これは、DNNの仕組みをよりシンプルに説明できる考え方だ。

この研究成果は、AIの設計や理解を大きく進めるだけでなく、量子コンピュータや人間の脳の情報処理と比べることで知的情報処理の本質にせまる新たな手がかりとなることが期待される。

画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)