
微細藻類のオイル生産効率を高める技術を発見 バイオ燃料実用化への貢献に期待
広島大学は4日、バイオ燃料の生産手段として有望視される微細藻類ナンノクロロプシスのオイルの生産性を高める鍵となる物質を発見したと発表した。オイル生産能力が向上してバイオ燃料実用化に貢献することが期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
カーボンニュートラル実現に向けて、化石燃料に代わるバイオ燃料を生産するための有力な手段として微細藻類が注目されている。微細藻類は植物プランクトンの一種で、水生の単細胞生物である。大気中のCO2を光合成によって吸収し、燃料として利用できるオイルを効率的に作り出すことができる。とりわけ海洋性微細藻類のナンノクロロプシスは、大量培養が容易で、燃料に適したオイルの生産性に非常に優れている。
このような藻類バイオ燃料の実用化において最大の課題となるのが生産コストである。微細藻類は、栄養が不足し生育に不利な環境下では細胞分裂を停止し、環境の改善に備えてエネルギー源であるオイルを蓄積する。しかし、生産性を上げるために細胞を増やそうとするとオイルがあまり作られなくなるというジレンマがあった。
研究グループはこの問題を解決するために、オイルの蓄積を誘導する栄養条件としてよく使われる「窒素欠乏」に代わり、細胞増殖や光合成への影響が比較的緩やかな「リン欠乏」の適用を試みた。
リン酸欠乏時の適応に重要な役割を果たす遺伝子の働きを止めたところ、リン酸欠乏下でオイルの蓄積量が2倍以上に増強された。さらに、この遺伝子がつくるタンパク質が細胞内でリンを貯蔵するポリリン酸を合成する酵素であることがわかった。これらのことから、リン欠乏下の細胞内にどれだけポリリン酸が存在するのかが、ナンノクロロプシスのオイル生産を誘導・活性化する仕組みに深く関わることがわかった。
この研究により、微細藻類ナンノクロロプシスの細胞内でのポリリン酸の量を制御することが、オイル生産性を向上させる有効な手段になることがわかった。今後はその生産性をさらに高め、藻類バイオ燃料の早期実現に向けた研究を推進していくとのこと。

画像提供:広島大学(冒頭の写真はイメージ)