
脂質を先に取ると食後血糖の上昇抑制 京大などがマウスで解明
食後の血糖値は、食べるものだけでなく、食べる順番にも左右される。これまで、野菜やたんぱく質、脂質を糖質より先に摂取すると、食後の血糖上昇が緩やかになることが知られていた。しかし、その背景にある体内の仕組みは十分に分かっていなかった。京都大学などの国際研究グループは、脂質を先に摂取すると、複数のホルモンと神経が連携して胃の働きを調節する仕組みをマウスの実験で解明した。研究成果は10月8日、米国糖尿病学会の学術誌『Diabetes』に掲載された。
研究グループは、一晩絶食させたマウスにオリーブ油を与え、15分後にブドウ糖を投与する実験を行った。水を先に与えた場合や、ブドウ糖を先に与えた場合と比較すると、オリーブ油を先に与えたマウスは、ブドウ糖の投与から15分後と30分後の血糖値が低く、胃から腸へ内容物が送り出される速度も遅くなった。食後60分間の血糖値の推移を総合的に評価した値は低下した一方、120分間では有意な差がなかった。さらに、アマニ油とラードでも同様に、早期の血糖上昇が抑えられ、胃から腸への移動が遅くなった。ココナッツ油でも胃から腸への移動が遅くなり、血糖上昇を抑える傾向が見られた。これらの結果から、脂質の先行摂取による効果は、主に食後早期の血糖上昇を緩やかにするものと考えられる。
この反応には、「グルカゴン」と「GLP-1」という2種類のホルモン、さらに「迷走神経」が関与することも分かった。GLP-1は血糖値に応じたインスリン分泌を促すほか、胃から腸への食べ物の移動を遅らせる働きがある。一方、グルカゴンは通常、肝臓で糖の産生を促して血糖値を上げるホルモンとして知られる。研究グループは、遺伝子操作やホルモンの信号を受け取る仕組みの働きを妨げる実験などを通じ、両者の働きが部分的に補い合って胃から腸への内容物の移動を遅らせることを確認した。また、脳と消化管をつなぎ、胃腸の働きなどを調節する迷走神経も、この作用に関わることを示した。オリーブ油の先行摂取では、「GIP」というインスリン分泌に関わる別のホルモンも早期に増加していた。ホルモンと神経が連携して食後血糖を調節する仕組みを具体的に示した点が、研究の新しさだ。
さらに、インスリンが効きにくい「 2型糖尿病」に似た状態を示すマウスや、インスリン分泌が著しく低下した「1型糖尿病」に似た状態のマウスでも同様の効果が確認された。ただし、人間でも同じ仕組みが働くかは分かっていない。人間では、ピザなど脂質と炭水化物を多く含む食事を取ると、食後数時間たってから血糖値が上昇することがある。こうした現象は「ピザ効果」と呼ばれる。インスリン注射を必要とする人では、糖の吸収時期とインスリンの作用時間が合わず、先に注射したインスリンの作用が弱まった後に血糖値が上昇する可能性もある。ただし、今回の研究では120分以降の血糖変化や、食後数時間たってからの血糖上昇は検証されていない。脂質を先に取る方法が、人間の血糖管理にどう影響するか、今後の研究で確かめる必要がある。
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