
高齢者の免疫細胞、培養液の粘度を変えると若い細胞に近い動き
加齢によって衰える免疫機能は、細胞そのものの変化だけでなく、周囲の物理的な環境にも左右される可能性がある。米ジョンズ・ホプキンス大学などの研究チームは、高齢者の免疫細胞を粘度の高い液体で培養すると、若い人の細胞に近い動きを一時的に取り戻すことを明らかにした。研究成果は10月15日、科学誌『Nature Communications』に掲載された。
研究チームは、健康な18〜93歳の計51人から採取した「T細胞」を調べた。T細胞は免疫細胞の一種で、体内を移動しながら、病原体などに対する免疫反応に関わる。高齢者のT細胞は、自発的に移動する能力を保っていた一方、狭い隙間を通るために細胞の形を変えたり、周囲の化学物質が発する信号を感知したりする能力が低下していた。
研究チームは、細胞が周囲の物理的な環境に反応する性質に着目した。培養液の粘度(液体の流れにくさ)を通常の約10倍に高め、T細胞を7日間培養した。その後、細胞を通常の環境に戻し、狭い微細な通路を使って移動する様子を調べた。その結果、高齢者のT細胞が、免疫細胞を誘導する化学物質の濃度差に反応して移動する速度や、一定方向に進み続ける傾向が若年者に近づいた。細胞膜の張力や、細胞の形を変える働きに関わる構造にも変化が見られた。
ただし、今回の研究は、培養液の粘度を人工的に高めることで、実験室で高齢者のT細胞の動きが一時的に改善することを示したもので、人体への効果は確認されていない。改善した動きも、通常の環境に戻して4日後には維持されなかった。研究チームは、高齢者由来のT細胞を利用する免疫療法などへの応用可能性を示しているが、実際の治療に役立つかどうかは、今後の研究で検証する必要がある。
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