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味の素と東工大教授ら、世界初のアンモニア新技術会社設立

新アンモニア合成法を初めて実用化 味の素・東工大など新会社

味の素とユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI)、東京工業大学元素戦略研究センター長の細野秀雄教授らは4月27日、世界初のオンサイト型アンモニア合成システムの実用化をめざす新会社つばめBHB(東京都中央区)の設立を発表した。

新会社は味の素の国内外発酵素材工場に、細野教授による高効率アンモニア合成技術を導入し、2021年頃を目処に世界初のオンサイトアンモニア生産の実用化を進める。将来的には、食品・医薬品、化成品等さまざまな分野への適用拡大を目指すとしている。

UMIは素材分野に投資するベンチャーキャピタル。今回の出資総額は4億5000万円で、UMI1号投資事業有限責任組合が53%、味の素が44%、細野教授らが3%出資する。ノーベル賞候補者として注目されている細野教授は、新会社の技術アドバイザーとして実用化を支援。東工大と新会社は共同研究により研究開発を推進し、UMIは新会社に対して資金供給、取締役等の経営メンバーの派遣、事業開発体制の強化等の経営サポートを行う。

世界初の試み「オンサイトアンモニア生産」モデルとは?

窒素は生体を構成するアミノ酸やタンパク質に必ず含まれており、生命活動維持に不可欠な元素で、アンモニアは窒素源となる重要な化合物。アンモニアの用途は広く、肥料の原料やさまざまな食品、医薬品の原料や化成品の原料として利用されている。世界総生産量は年間1億6000万トンを超える。

現在のアンモニアの生産は100年以上前にドイツで発明されたハーバー・ボッシュ法(HB法)が主流。HB法は空気中の窒素と天然ガス等から得られる水素のみでアンモニアを合成でき、世界中で広く活用されている。一方で、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要で、高いエネルギー負荷がかかるため、大型プラントでの一極集中・大量生産となる。設備投資が高額になることに加え、生産拠点である大型プラントから世界各地に点在する需要地にアンモニアを輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから、物流コストが非常に大きいことも課題となっていた。

この課題を解決するため、細野教授らは科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業の研究開発の中で、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能な触媒を発見・発明した。新触媒はHB法で用いられる触媒とは全く異なる低温・低圧の反応条件であることから、従来難しいとされた小型プラントの敷地内(オンサイト)でのアンモニア生産が可能になる。今後、この技術の実用化により、世界で初めてとなる、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する「オンサイトアンモニア生産」モデルの実現が期待される。

味の素は、自社製品の発酵素材の生産において多くのアンモニアを原料として利用している。今回細野教授らが発見した新触媒を用いたオンサイト型のアンモニア生産法を導入することで、自社のアミノ酸生産工場内にアンモニア生産プラントを設置できるため、アンモニアの調達コストが削減でき、結果として生産コストの大幅な削減が期待できるという。

新会社つばめBHBは、味の素の国内外発酵素材工場に同技術を導入し、2021年頃を目処に世界初のオンサイトアンモニア生産の実用化を目指す。将来的には、味の素に加えて、他パートナー企業と連携して、農業肥料、食品・医薬品、化成品等への適用拡大を図っていく。

冒頭写真:左からJST 後藤理事、つばめBHB中谷代表取締役、UMI月岡代表取締役、東工大細野教授、味の素西井社長、東工大三島学長

 
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