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カフェインを摂りたくなってしまう理由とは? エナジードリンクに潜む危険

カフェインを摂りたくなってしまう理由とは? エナジードリンクに潜む危険

「世界では、5人に1人が不健康な食生活が原因で死亡している」――先頃、英医学誌ランセットに掲載された研究論文が話題を呼んだ。健康について考えるとき、そこには日々の食生活が大きな役割を担っており、自分が日頃何を摂取しているのか自覚する必要があると気づかされる。今年6月、日本中毒学会の調査で、2011年度からの5年間に、カフェインを多量に含む眠気防止薬や「エナジードリンク」などの清涼飲料水の急性中毒で少なくとも101人が救急搬送され、7人が心停止となり、そのうち3人が死亡したということが報じられた。

カフェインが人を死に至らしめる?

このニュースに接して、カフェイン、中毒、そして死、という3つの単語の組み合わせに違和感を覚えたのは筆者だけだろうか。カフェインは、日常生活の中での嗜好品(コーヒーやお茶)やエナジードリンクから、もしくは医薬品中の成分として危険性を意識されずに摂取されていることが多い。しかし安全だと思い込んで無知のまま致死量を摂取し、急性中毒で死ぬということが、実は現実に起こっている。

東京福祉大学の栗原久教授による『日常生活の中におけるカフェイン摂取』という文献によれば、健常人では、1回摂取量が200mg以内、1日摂取量が500mg以内、激しい運動を行う場合はその2時間以上前にカフェイン単回摂取量が約200mgまでであれば、 安全性の問題は生じないそうだ。エナジードリンク(典型例では、2000mlボトル中に、カフェイン300~320mg、タウリン4000mg、グルクロン酪酸2400mg含有)、あるいはカフェイン200mg未満+アルコール摂取量が0.65g/kg(2単位)未満の摂取なら、カフェインの有害作用はほとんど認められていない。

しかし、一度にカフェイン1g以上を摂取すると中毒症状が出るとされ、激しい吐き気やめまいが起き、心拍数が上がるという。よく薬局やコンビニで売っているエナジードリンクならば、一本200mlとして、一度に約15本以上飲んだ場合に中毒症状が出るということが言える。

有害なものを摂取し続ける依存症の仕組み

一方で、人は「体に悪い」と分かっていても、なぜそういった有害リスクのあるものを摂取し続けてしまうのだろうか? これについて、依存症に詳しい日本精神神経学会認定専門医の垣渕洋一氏に伺った。

まず「中毒」と「依存症」の概念の違いだが、「中毒」は、自ら摂取したいと思っていなくても、許容量を超えて摂取することで体の正常な機能が阻害されること。一方で、「依存症」とは、自分でその物質を摂取せずにはいられない状態を指す。いわば慢性疾患である。カフェイン中毒とは、カフェインを脅迫的に取りたくなってカフェイン依存症になっている人が、一気にカフェインを摂取したために急性作用が生じた状態のことをいう。

「カフェインは薬物であり、薬物を摂取するとドーパミンが出ます。脳の報酬系(心地良いことが起きた時に活性化される脳内のシステム)は、カフェインを飲むとドーパミンが出るので、『よいことだ』と記憶してしまう。報酬系の欠点は、良し悪しの判断ができないことにあります。ドーパミンが出たことで、『気持ちいい』、『よいもの』と認識される。このようにカフェインも繰り返し飲みたくなると、ニコチンやアルコール、覚せい剤よりも効果は強くないが依存性が生じる。そして繰り返し摂取するようになると耐性が出現し、過剰摂取につながってしまうのです」垣渕医師はこのように、カフェイン依存症の仕組みを説明する。

最大の健康管理は自分の食習慣への自覚

「そもそもカフェインを摂取する目的とは何でしょうか。例えば、試験勉強を乗り切るために、すっきりしたい、気分転換したい、疲労感の軽減をしたいなどの目的から最初はエナジードリンク1本から始まります。そして次に3本、それで本当にうまくいったと報酬系に刻み込まれると、耐性がついて6本……と一度に飲む本数が増えていく。そして致死量を超えたときに急性中毒となり死に至ることが起こりうるわけです」

急性中毒による死を避けるためには、まず自分自身の生活を振り返る必要がある、と垣渕氏は指摘する。

「『連日大量にカフェインを摂取しなければ生きられない』という自覚があるようならば、専門医を訪れてみることをお勧めします。または摂取量を徐々に意識的に減らしていったり、カフェイン摂取以外の方法で気分転換や疲労感を軽減することを考え、実践したりしてみることが大切です。また、何か特別なことをしなくても、運動、散歩、大声を出すことを習慣づけてみるなど、ストレス軽減の方法は他にもたくさんあります」

カフェインの過剰摂取が中毒死につながると聞くと不安が煽られるが、自分の健康管理ができるのは誰でもなく自分自身。まずは自分の生活全般を振り返り、何かに依存してはいないか、自分で自分の健康を害していないか、考えてみることが大切だ。
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