抗インフルエンザ新薬開発への新研究発表 京大

抗インフルエンザ新薬開発への新研究発表 京大

京都大学は10日、東京大学、米国ウィスコンシン大学との共同研究グループで、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスに遺伝情報(ゲノム)を伝える仕組みを明らかにしたと発表。これを用いて、新規の抗インフルエンザ薬開発につなげられる可能性が高まった。この研究成果は、英国の科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

あらゆる生物が親から子へとゲノムを受け継ぎ、ウイルスも親ウイルスから子孫ウイルスにゲノムを受け継ぐ。インフルエンザウイルスは8本のRNA(リボ核酸)をゲノムとして持っているが、同グループはすでに子孫ウイルスが、中心となる1本のRNAを7本のRNAが取り囲み、”1+7″という特徴的な配置を取ったものを取り込むことを明らかにしていた。

今回はRNAを7本しか持たない変異子孫ウイルスを研究対象にしたところ、その場合も”1+7″配置にまとめられた8本のRNAが取り込まれることがわかった。その際に8本目のRNAとして取り込まれたのはインフルエンザウイルスのものではなく、感染した細胞のものだった。

これにより、インフルエンザウイルスが子孫ウイルスにゲノムを伝えるときに8本のRNAを”1+7″の配置に集合させる過程が重要であることがわかり、またウイルスのRNAが足りないときには感染細胞から奪ってまで行うことも解明された。

この研究は、インフルエンザウイルスの遺伝の巧妙な仕組みを明らかにし、その増殖機構について大きな知見を与えるものとみられている。より詳細なメカニズムがわかれば、ウイルスRNAの集合を標的とした新規抗インフルエンザ薬の開発につなげることが期待できる。

写真提供:京都大学