テロメアの長さと炎症が長寿に関連

「テロメアの長さ」と「炎症」が人間の長寿のメカニズムに関連している――。20年以上にわたって100歳以上の「百寿者」を研究してきた慶応義塾大学の新井康通専任講師らがこの関連性を突き止め、7月30日に国際科学誌『イーバイオメディシン』で公表した。

今回、百寿者684名とその家族167組、85~99歳の高齢者536名の合計1554名を対象に、造血能、代謝、肝機能、腎機能、細胞老化(テロメアの長さ)を調査し、傾向を分析した。テロメアとは染色体の末端部分にある繰り返し構造で、細胞が分裂する度に少しずつ短くなる。テロメアが一定の長さになると、それ以上細胞は分裂できなくなる(「ヘイフリック限界」と呼ばれる)。そのため、テロメアの長さは細胞の老化を反映すると考えられている。

調査の結果、百寿者とその家族ではテロメアの長さがより長く保たれていた。実際の年齢が80歳代でも、60歳代の平均値に匹敵する長さだった。また、高齢になれば上昇するはずの炎症の有無や程度を示す指標の値も、百寿者の家族では低かった。特にこの値が低いグループは、認知機能と生活の自立をより長く保っていた。

医学の進歩で寿命は延びているが、生活の質の向上も伴わなければならないだろう。炎症を抑えることで、認知面や自立した生活という面でも高齢者の生活の質が改善する可能性がある。しかし、現在利用できる抗炎症薬にはさまざまな副作用があり、長期的に使うことができない。今回の成果を元に、より安全な代替薬の開発が望まれる。

さらに、なぜ老化に伴って炎症が起こるのか、免疫や腸内環境、食事や栄養摂取との関連などの分析を進めることで、新しい健康増進法の開発につながることも期待される。

テロメアの長さと炎症が長寿に関連

画像提供:ScienceDirect