SS-520 5号機の打ち上げに成功。超小型衛星を「たすき」と命名

小型ロケット打ち上げに成功 超小型衛星「たすき」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3日の午後2時3分、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から世界最小クラスのロケット「SS-520」5号機を打ち上げた。約7分30秒後、超小型衛星TRICOM-1R(トリコム・ワンアール)を分離、軌道へ投入することに成功。民生技術を用いたロケットによる超小型衛星打上げの実証実験として行われ、衛星の開発を導いた東京大学の中須賀真一教授は、衛星の愛称を「たすき」と発表した。

ロケットの5号機は4号機と同じく、観測ロケットとして1998年2月に1号機を打ち上げた2段式のSS-520に第3段を搭載しており、衛星打ち上げ用に改良された小型ロケット。全長わずか9.54mで、140kgの貨物を約800kmの高度まで打ち上げる能力がある。今回の成功により、SS-520は実際に人工衛星を軌道に投入したロケットとしては世界最小。昨年1月に打ち上げた4号機では、ロケットの第1段の飛行は正常に行われたものの、飛行中に電源ケーブル周りのトラブルから機体情報を送信できなくなり、第2段モータの点火を中止し、超小型衛星TRICOM-1の軌道投入は行われなかった。

今回、軌道に無事投入された人工衛星TRICOM-1Rは、「ほどよし信頼性工学」を基に開発しており、重さはわずか約3kg。ほどよし信頼性工学とは、コストをおさえつつもミッションは遂行できる「ほどよい信頼性」を確保して開発するという考え方だ。東京大学が開発した超小型衛星「ほどよし3&4号機」で実証された民生品を活用して開発した。TRICOM-1と同じく、地上から送られるデータを収集し、管制局上空に来た時に地上局にデータを転送するミッションと、搭載カメラによる地球撮像ミッションを担うほか、TRICOM-1Rでは軌道投入後、ただちに自律的に地球撮像して、地上との最初の通信で観測データを地上に送る即時観測ミッションが追加された。

画像提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)