原因不明の認知症、世界初の古細菌が原因

原因不明の進行性認知症について原因を追及した結果、世界初の「細菌」による感染症を発見した。鹿児島大学の髙嶋博教授らのチームが、8月13日付の米神経科学誌のオンライン版で発表した。

古細菌は、真核生物、細菌(真正細菌)と並んで全生物界を3分する生物グループのひとつ。通常、高塩濃度や強酸性の環境、温泉や海底熱水地帯、腐った沼地など、生物の生存には非常に過酷な環境に存在する。動物の口の中や消化管内に存在するものも知られているが、人間への病原性はないと考えられてきた。

今回、南九州のある地域内で進行性の認知症を発症した4人の患者(47~72歳)の脳から組織片を採取して調べた結果、通常の感染性生物とは異なる、核や細胞壁を持たない2~7ミクロンの未知の微生物が血管周囲に集まっていた。この微生物から抽出したDNAを解析したところ、ある種の古細菌のDNA断片が2人から見つかった。いずれの患者も抗菌薬と副腎皮質ステロイドの併用療法で症状が改善し、有効な治療法の1つであると確認された。

この発見をきっかけとして、他の原因不明の病気からも古細菌感染症が見つかり、古細菌による症状の理解が進むことが期待される。

原因不明の認知症、世界初の古細菌が原因
画像提供:Neurology Neuroimmunology & Neuroinflammation