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宇宙エレベーター建設のカギ 「カーボンナノチューブ」の強度検証

大林組(東京都港区)は、静岡大学、有人宇宙システム株式会社(東京都千代田区)と共同で、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」モジュールにある船外実験プラットフォームを用いて、宇宙環境にさらしたカーボンナノチューブ(以下、CNT)の試験体の損傷度合いを検証し、結果を2日に発表した。同社ではCNTの利用を想定して、上空10万km(地球と月の距離の約4分の1)まで人とモノを運ぶ「宇宙エレベーター」の建設構想を2012年に発表している。

先端材料であるCNTは、鉄筋の4分の1から3分の1という高い軽量性、鉄鋼の約20倍の引張強度、高弾性力、銅の100倍以上もある高電流密度耐性、銅の5倍以上の高熱伝導性など、多くの優れた性質を持ち、さまざまな分野での適用が期待されている。

今回の実験で使用したCNTは高品質で長尺なより糸の形状で、直径約20ナノメートルの多層カーボンナノチューブ繊維をより合わせたもの。2015年4月から実験を始め、ISS進行方向の前面で宇宙空間に1年間さらしたもの、背面で1年間さらしたもの、背面で2年間さらしたものという3種類の試験体を設置し、2017年7月にすべての試験体を回収していた。

回収した試験体を電子顕微鏡で確認すると、ISS進行方向の前面にあったものの方が、背面にあったものよりも大きく損傷していた。ISSが周回する地上400km付近は、地球上の大気が希薄に存在する電離層の熱圏と呼ばれる空間で、酸素などが分子状態を保てずに原子状態で存在している。確認された損傷は、その原子状の酸素がCNTに衝突して生じたものと考えられる。秒速9kmで地球を周回しているISS船外の環境では、ISS進行方向の前面にある方が背面よりも損傷しやすい環境であることが確認できた。

さらに、同じ背面にあったが、宇宙空間にさらした期間の異なる試験体を比較したところ、損傷の程度にあまり違いがなかった。このことから、今回の実験では背面での期間の違いは損傷程度に影響が少ないことも判明した。

また、回収した試験体に対して強度試験を実施したところ、前面・背面ともに引張強度の値が設置前より低下しており、前面の方がより大きな低下を示した。これらの結果は、地上で実施した曝露ばくろ条件試験と高い相関性を示しており、地上での試験が宇宙の複合環境下での損傷状態を類推するのに有効であることも確認できた。

今後は、回収した試験体に対し、放射光測定による詳細な分析を進め、原子構造レベルでの損傷メカニズムを究明していくとともに、CNTの損傷を抑制するための耐久性向上対策技術を開発していくという。

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画像提供:大林組