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天才物理学者ホーキング博士の病「ALS」とは【ニュースのコトバ解説】

天才物理学者ホーキング博士の病「ALS」とは【ニュースのコトバ解説】

ブラックホールをはじめ、宇宙の謎を解明する研究に尽力したことで知られるスティーブン・ホーキング博士が、2018年3月14日にこの世を去った。博士は21歳の時に筋萎縮性側索硬化症きんいしゅくせいそくさくこうかしょう(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)と診断され余命2~3年と言われたが、76歳に至るまで生き、精力的な活動をしてきた。

車いすに乗り、合成音声で会話する姿で、この天才物理学者が多くの人々に印象付けた「ALS」とは、いったいどういう病なのだろうか。

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見聞きし、感じ、考えられるが、動けず、話せない

ALSは、脊髄や脳の運動神経が選択的に侵される難病。手足や顔など、本来思い通りに動かせる「随意筋」が動かせなくなり、寝たきりになる。筋肉が直接侵されるわけではないが、運動神経が筋肉を動かす指示を伝えることができなくなると、その神経とつながっている筋肉も衰え痩せてしまう。

一方で、自律神経や、目や耳などの知覚神経は侵されないため、心臓、消化器官、排せつ、そして五感、記憶、知能などには障害が出にくいという。ただし、呼吸は自律神経と随意筋の両方が必要なため、次第に困難になっていく。

日本国内の患者数は、厚生労働省によると、2016年度末時点で特定疾患医療受給者証を交付された人数が9557人。10万人に7.5人という計算になる。

介護体制が必要だが、生活できる

ALSの原因は不明で、まだ治療法も確立されていない。発症の年齢や進行具合なども患者それぞれで異なるが、共通しているのは、呼吸が困難になるため人工呼吸器をつけるかどうかを判断する時が来るということだ。言い換えれば、生きるか死ぬかを自分自身で選択することになる。家族たちが自分を介護し続けなければいけないということを苦に思い、呼吸器をつけない選択をする患者は少なくないという。

しかし、ALSは国の指定難病の一つであるため、医療費助成制度をはじめ、さまざまなサービスが利用できる。都道府県から特定医療費受給者証を交付されれば、自己負担上限額を超えないように医療費が補助される。また、身体障害者手帳の交付を受ければ、税金や公共料金の減免・控除や日常生活用具の給付・修理、ホームヘルプサービスなどの障害者福祉サービスが受けられる。さらに、通常65歳以上で利用できるようになる介護保険を40歳以上で利用でき、訪問介護や施設利用などの介護保険サービスが受けられる。

コミュニケーション手段はさまざま

ホーキング博士はコンピュータを使って合成音声で会話していた姿が印象的だが、このように、体の残された機能を使ってコミュニケーションがとれるようにさまざまな手段が開発されている。手や足の指、眼球が動く場合は「文字盤」という道具や、専門技能を持ったヘルパーを介して伝達する手段もある。パソコンを使ったものでは、文字盤と接触式スイッチなどを使って文字を入力する方法や、マウスの代わりに視線の動きで入力する方法がある。

このような介護支援体制を活用していけば、ホーキング博士のように長く生き、生活することができるというのも、この病気の特徴かもしれない。

周囲の理解と助けが重要

ホーキング博士は診断を受けてから55年間生きて研究活動を続けた。2017年のBBCの取材で、彼はこれについて、「非常に大変なことで、家族や同僚、友人たちが大いに支えてくれなければ無理だった」と述べた。

また、日本ALS協会の中野玄三さんは同協会ホームページにつづったメッセージの中で、ALSについて「呼吸器をつけたら死なない」と表現し、ヘルパーに支えられて不自由なく生活でき、「乗り越えられる」と述べている。

ALSを乗り越えるのに必要なのは、治療法の研究に加え、介護など社会的に支える仕組みづくりだといえるだろう。それらには人々の理解と助けが必要になる。

アイス・バケツ・チャレンジで認知度アップ

ALSというと、2014年に米国で始まり世界中で流行した「アイス・バケツ・チャレンジ」を思い出す人もいるかもしれない。これはSNSを通じて広がり、指名されると「氷水をかぶる」か、「ALS協会に寄付する」か、あるいは両方かを選択するというものだ。もちろん強制ではないが、多くの著名人たちが参加し、米国ではバラク・オバマ大統領(当時)、ビル・ゲイツ氏らの著名人が名を連ね、日本でも孫正義氏、山中伸弥氏などが参加して注目を集めた。

これはALSそのものよりもパフォーマンスが注目されたため、賛否両論はあったものの、認知度向上とALSの研究や患者の生活向上支援の資金集めに役立った。米ALS協会では同年7月29日からの3週間で1330万ドル(約13億6000万円)、日本でも同年8月末までの2週間の時点で2747万円が寄付され、研究プロジェクトなどに充てられた。日本ALS協会への寄付は例年600万円程度だというので、このムーブメントの効果は非常に大きなものだったといえるだろう。

2018年3月現在、アイス・バケツ・チャレンジは形を変え、トウガラシを食べるか寄付をするかを選ぶ「ペッパー・チャレンジ」として、SNSを介して再び徐々に広がりつつあるようだ。こうしたイベントがなくともALS団体へ寄付することはできるが、認知度向上につながり、研究や支援体制がさらに充実することを期待したい。

一般社団法人 日本ALS協会
一般社団法人 END ALS

(冒頭の写真はイメージ)

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