白亜紀末の恐竜大量絶滅後、2〜3年で生態系が復活

白亜紀末の恐竜大量絶滅後、2〜3年で生態系が復活

東邦大学理学部の山口耕生准教授らを含む総勢31名の国際研究チームは、白亜紀末に恐竜を含む多くの生物が大量絶滅した後、ごく短い期間で生命圏が復活していたことを発見した。天体衝突で形成されたクレーター内の堆積物を分析したところ、爆心地では衝突後2~3年という極短期間で生物が復活し、少なくとも3万年以内には生態系が繁栄していたことを突き止めた。英科学雑誌『ネイチャー』のオンライン版に5月30日付で掲載された。

約6600万年前の白亜紀末、直径約10kmと推定される小天体が現在のメキシコ・ユカタン半島の北部沖に衝突した。衝撃波・爆風・大津波・気候変動が様々な時間スケールで起き、環境が大激変して、恐竜を含め当時の約76%の生命が絶滅したことが知られている。その後は古第三紀となり、新たな生物相が繁栄するようになった。
 

天体衝突後の生命および生態系の復活は、どのようなものだったのか?

衝突時に形成された直径約200kmのクレーター内部、つまり爆心地での生命圏の復活のシナリオを描くため、2016年に国際深海科学掘削計画(IODP)の第364次研究航海による掘削が行われ、全長800mの柱状試料が採取された。

世界の他地域で採取された試料は、わずか数ミリ程度の厚さでしか、天体衝突直後の堆積物を含んでいない。一方、今回対象とした試料は、下部には衝突由来の超巨大津波によってクレーター内にもたらされた層状堆積物が、上部には衝突後の濁った海水からゆっくりと沈降した堆積物が、1m以上に渡り含まれていた。天体衝突後の環境の変化を詳しく記録しているこの試料に焦点をあてて、微化石(微小なプランクトンの遺骸。環境の変化を知ることができ、より大きな生物の活動に関する代理指標として使うことができる)・生痕化石(這い痕のような生物の生活痕が化石となったもの)・化学分析を組み合わせた詳細な研究を行なった。

その結果、天体の衝突で形成されたクレーター内では、衝突後2~3年以内という想定外とも言える極めて短い期間で生物が復活しており、少なくとも3万年以内には植物性プランクトンが作る有機物をベースにした多様な生態系が復活していたことがわかった。同時代の地球上の他のどの地点よりも、クレーター内の生態系の復活が予想外にずっと早かったことになる。

クレーター内で比較的早く生命圏が復活したということは、天体衝突は生物の大量絶滅を引き起こしはしたが、その復活を長期間にわたり妨げるものではなかった、と言える。生態系復活の速度に最も影響を与えたのは、全球規模の環境の復活ではなく、海洋循環や食物連鎖や(生態学的な)生息場所があったかといった局所的(ローカル)な要素だったのかもしれない。また、天体衝突後の生態系は、衝突前と比べるとかなり違っていた。大量絶滅を生き延びたわずかな生物種は、衝突後の海洋という新しい環境により良く適応するように進化していった、と推察される。

大量絶滅直後の生態系の復活は、そのタイミングや種の構成の両方において、予測が全く不可能な過程である、とも言える。この研究は、地球の歴史の中で幾度も生じた生物の大量絶滅の後の海洋生態系の復活に関して、重要な示唆を含んでいる。

白亜紀末の恐竜大量絶滅後、2〜3年で生態系が復活

白亜紀末の恐竜大量絶滅後、2〜3年で生態系が復活

画像提供:Springer Nature(冒頭の写真はイメージ)

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