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「キログラム」など4つの単位で定義が改定へ 次の候補は「秒」?

「キログラム」など4つの単位で定義が改定へ 次の候補は「秒」?

質量の単位「キログラム」など4つの単位の定義が、2019年5月20日の世界計量記念日から、新しいものに変わることが決まった。従来、「基準となる人工物」を定めることによって定義してきたが、新しい定義では「物理定数」の式で表現する。今回の変更で、全部で7つある「基本単位」すべてが人工物ではなく物理定数を使った表現に変わることになる。
 

再定義された4つの単位

16日にフランスで開催された第26回国際度量衡総会で、国際単位系(SI)の7つの基本単位のうち、質量の単位「キログラム(kg)」、温度の単位「ケルビン(K)」、電流の単位「アンペア(A)」、物質量の単位「モル(mol)」の新定義が採択された。7つの基本単位すべてが人工物による定義ではなくなり、物理定数の式で表現されることになる。

キログラムは1889年から変わらず「国際キログラム原器」という人工物によって定義されてきた。この原器は厳重に保管されているが、汚れや摩耗など、わずかな不安定さが問題となっていた。そこで定義改定に向け、主要各国が最高水準の技術を投入し長期間、検討と議論を進めてきた。今回、物理定数の一つ「プランク定数(h)」を基にしたものに改定されることになった。同様に、アンペアは「電荷素量(e)」、ケルビンは「ボルツマン定数(k)」、そしてモルは「アボガドロ定数(NA)」という物理定数を用いて再定義される。
 

今後、何が変わるのか

定義が変わっても私たちの生活には大きな影響はないが、長期的に見ればさまざまな恩恵がありそうだ。例えば、1983年に長さの単位「メートル(m)」の基準を「メートル原器」から「光の速さ」という物理定数に基づく定義にしたことで、微細な加工をする際に高精度な評価ができるようになっている。これと同様に今回の変更で、微小な質量を扱うナノテクノロジーなどの分野や、極低温・超高温制御が必要な材料開発などの分野で、高精度な測定が可能となり、新しい産業につながることが期待できるという。

今後、再定義されそうなものに、時間の単位「秒(s)」がある。秒は、1967年以来、「セシウム原子の振動」によって定義されている。しかし、東京大学の香取秀俊教授が開発を進めている「光格子時計」では、セシウム原子時計の精度を100倍以上も上回る「300億年で1秒の誤差」を実現しており、新たな「秒の定義」の候補として注目されている。