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春を告げるソルブのイースターエッグ・マーケット 前編

春を告げるソルブのイースターエッグ・マーケット 前編

春の訪れを告げるイースター(復活祭)。イエス・キリストの復活に由来するこのお祭は、キリスト教圏ではクリスマスに匹敵する重要な節季だ。ドイツ東部に位置するザクセン州バウツェンでは毎年、イースター前に開かれる有名なイースターエッグ・マーケットがある。この地域に住む少数民族ソルブ人の伝統文化である、美しいイースターエッグの彩色や絵付けが見られるその現場を訪れた。

春を告げるソルブのイースターエッグ・マーケット 前編
ザクセン州バウツェン。周辺地域には多くのソルブ人が暮らしている
 

芸術品のようなイースターエッグ

卵の色塗りは、ドイツではイースター前の伝統行事。各家庭などで色塗りをする場合、使われるのはかたゆで卵で、これはイースター当日に家の中や庭に隠して遊ぶ「卵探し」などに使われる。もちろん、最後は食べるためのものだ。

しかし、バウツェンのイースターエッグ・マーケットで出会ったのは、おいそれと割って食べることなどはばかられる、芸術品のようなイースターエッグだった。

「昔は卵を20分くらいゆでてから色塗りをしたんですよ。そうするとカチカチになって卵が腐ることもない。今は卵のてっぺんに小さな穴を空けて、そこから中身を出した殻に絵付けをするんです」
ソルブ・ハウスを案内してくれたエバーハルト・ツォーベルさんは、そう説明してくれた。

春を告げるソルブのイースターエッグ・マーケット 前編
うっかり間違っても、割って食べようとは思えない美しいイースターエッグ
 

平和的に共存してきた少数民族ソルブ人

ツォーベルさんは、ドイツの少数民族ソルブ人の一人。ソルブ人とは、民族史的には7世紀にその存在が確認されている西スラブ系の少数民族で、多くの人が今もドイツのザクセン州およびブランデンブルク州の独自の集落の中で暮らしている。小さな村で農業や養蜂業に従事し、歴史の中でドイツ人と争うことや、大きな迫害を受けることもなく(ただし、ナチス時代にはソルブ語を禁じられた歴史もあった)、ゆるやかに同化しながら共存してきた。ちなみに、ソルブ人には際立った外見的特徴があるわけではなく、特徴的な名前を名乗っているわけでもない。ドイツのパスポートを持ち、おもな宗教はカトリックかプロテスタント。公式書類にはどこにも「ソルブ人」と表記する箇所はない。ソルブ人を識別できるものがあるとすれば、それは唯一、彼らの共有する言語「ソルブ語」のみなのだという。

春を告げるソルブのイースターエッグ・マーケット 前編
イースターエッグ・マーケットに民族衣装姿で参加したソルブ人たち
 

伝統工芸の藍染が施された卵

ソルブ人のイースターエッグの絵付け技術には4通りのものがあり、最も一般的なものが、蝋を使った絵付け法。蝋で模様を描いてから卵に色を付けて染め抜く方法と、色とりどりの蝋で模様を描いていく方法とがある。そして近年、希少な技術となってしまったのがスクラッチ法とエッチング法だ。

色とりどりの美しいイースターエッグが並ぶマーケットの会場で、ひときわ目を引いたのが、スクラッチ法によって作られた藍色のイースターエッグ。これは、ライナー・グローザさんの作品だ。ソルブの伝統工芸である藍染の草花や太陽の模様を取り入れ、色染めをした小さな卵ひとつひとつに特殊な彫刻刀で細工をつけていく。1つの卵を完成させるのに要する時間は、約2時間半だという。(続く)

春を告げるソルブのイースターエッグ・マーケット 前編
ソルブの伝統的な藍染の模様を施したイースターエッグ

冒頭の写真は、ドイツに住む少数民族ソルブ人が作る、色とりどりのイースターエッグ。
(in association with the GNTB/協賛:ドイツ観光局)
 

参考記事
「復活」の意味 イースターの由来と祝い方【ニュースのコトバ解説】(2018/04/01)

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