[書評]『そうだったのか! 朝鮮半島』【GWに読みたい本】
本書は、ジャーナリストの池上彰氏による「そうだったのか!」シリーズの朝鮮半島版である。戦前から現代にいたるまでの朝鮮半島の歴史が、史実に基づき客観的な視点で論じられている。図や写真も多く、さらに巻末には年表や参考資料も添えられている。
朝鮮半島が日本の植民地支配から解放され、その後南北に分割されるところから叙述がはじまり、大韓民国(以下、韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)それぞれの建国の歴史をたどりながら、移りゆく国家の運営体制や指導者の思想等について詳しく解説した本書は、朝鮮半島における戦後の歴史的な流れを理解するうえで適した書物であるといえよう。
日本の教科書には朝鮮半島に関する記述は少なく、隣国でありながらも知られていないことは多い。たとえば、今年は植民地期朝鮮における三・一独立運動の勃発ならびに大韓民国臨時政府樹立から100周年にあたる年であり、韓国国内ではそのことがクローズアップされているが、そういった事実も日本ではあまり報道されない。
最終章において、池上氏は行きづまる日韓関係について「理不尽な言いがかりにはきちんと反論して主張する一方、相手に対する敬意は払うこと。ここから始めるしかないのではないでしょうか」と述べている。
本書は、日韓間でさまざまな問題が発生し、ネット上で「反日」や「嫌韓」という言葉が飛び交う今日において、朝鮮半島の歴史や情勢を理解し、日韓関係について考え直すきっかけを与えてくれるものであるといえるだろう。
書誌情報
『そうだったのか! 朝鮮半島』
著者:池上彰
発売日:2014年11月26日
発行:ホーム社