「食べる順番」重視の食事指導 減量効果・継続性を証明

関西電力医学研究所の清野裕所長、岐阜大学大学院医学系研究科の矢部大介教授らの研究グループは、保健指導において「食べる順番」に重点をおいた食事指導が、継続して実践可能かつ減量効果に優れた指導であることを明らかにした。この研究成果は10月19日付の国際学術雑誌『Journal of Diabetes and Its Complications』(オンライン版)で公開された。

同研究は関西メディカルネットと花王などとの共同研究により実施。健康検診の結果から生活習慣改善に向けた保健指導が必要とされる42名を対象に、「食べる順番」に重点をおいた食事指導、「栄養バランス」に重点をおいた食事指導、従来通りの食事指導を行った3つのグループに分けて、6か月間、保健指導にのっとった行動計画を行った。6か月後に身体測定・採血・食事摂取量を測定して評価した。

「食べる順番」に配慮した食事を実践したグループ(以下、食べる順番群)は、食事開始後少なくとも5分間は食物繊維を含む食品やたんぱく質や脂質を含む食品(魚料理など)を食べ、その後、炭水化物を含む食品(米飯など)を、食物繊維を含む食品やたんぱく質、脂質を含む食品と一緒に食べるようにした。

「栄養バランス」に重点をおいた食事グループ(以下、栄養バランス群)は、花王が開発した「スマート和食」(*)の指導ツールを用いた。今まで、栄養バランスに重点をおいた食事は、栄養に関する一定の知識を必要とするため、継続した実践が困難とされていたが、毎食ご飯を中心に主菜1皿と副菜2皿をそろえることや、肉は低脂質なものを選ぶなど、「スマート和食」の食事5か条にのっとって食事をした。

6か月後の測定結果では、食べる順番群は栄養バランス群に比べて、約1.5kg体重が減少していた。また1日の食事摂取量も200kcal程度減少した。食事に関する行動計画順守は、食べる順番群は従来群と同等だったが、栄養バランス群は他2群に比べて優位に低い値だった。この結果から、保健指導において「食べる順番」に重点をおいた食事指導が継続して実践でき、かつ減量効果に優れた指導であることが明らかになった。

同グループは今後、より大きな集団を対象に研究を行うことで糖尿病の発症予防や重症化抑制についても検討を進めていく方針。今回の研究結果に基づき、日本における40歳から74歳のすべての被保険者・被扶養者を対象に行われている特定検診・特定保健指導の質の向上が期待される。

*スマート和食:花王が内臓脂肪蓄積と食事を含む生活習慣の関係を研究し、「内臓脂肪をためにくいという日本型食生活の健康ベネフィットを、現代のおいしい食生活にスマートに取り入れる」という意味で、「スマート和食」と名付けている。

画像提供:関西電力医学研究所