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Googleが量子コンピューターの量子的飛躍を実証 スパコンを超える

Googleが量子コンピューターの量子的飛躍を実証 スパコンを超える

Googleは23日、量子コンピューター研究の重要なマイルストーンである「量子的飛躍」を実証したと発表した。同社が開発した「Sycamore (シカモア)」と名付けたチップは、世界最速のスーパーコンピューターで1万年かかると推定される計算をわずか200秒で実行したという。これにより量子コンピューターの計算能力がスーパーコンピューターなど従来のコンピューターを上回ったことが明らかとなった。同日付で英科学誌『Nature』(電子版)に論文が掲載された。

量子コンピューターは通常のコンピューターが情報を扱う0か1かというビットの概念を量子ビットと呼ばれる物質の量子力学的な状態で表現する。通常のコンピューターのビットは0か1かどちらかになるのに対して、量子ビットは任意の割合で0と1両方の状態を重ね合わせて保持できる特性を持つ。これを量子メモリーとして扱うことで従来のコンピューターに比べて飛躍的な性能の向上が図れる可能性があるとされている。

「シカモア」では54量子ビットのプロセッサを2次元のグリッドでお互いに接続するように構成した。このため量子ビットの状態がプロセッサ全体で迅速に影響し合い、古典的なコンピューターが効率的に模倣することは難しい計算ができる。

今回の実験では「シカモア」を用いて、まず12~53量子ビットのランダムで単純な回路を実行し、古典的シミュレーションで理論的モデルと比較した。システムの動作確認が取れた後に53量子ビットでランダムかつ複雑な回路を作成し、古典的シミュレーションで不可能になるまで回路の深さを増やした。その結果、1京次元の状態空間まで量子力学の理論から期待する通りに機能することが示された。

量子コンピューターが実現すれば、新しい材料の設計、自動車用の軽量バッテリー、より効率的に肥料を生産できる新しい触媒、もっと効果的な医薬品の開発など各分野での成果が期待できる。今後は量子物理シミュレーションや量子化学、生成モデルの機械学習をはじめとする、比較的短期的に有用な結果が期待できるさまざまな分野への応用に取り組んでいくという。

画像提供:Google