2つの世界大学ランキング 東大の敗因は?

9月に発表された2つの世界大学ランキングが話題を呼んだ。英国の大学評価機関クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds, QS)が9月15日に、同じく英国の高等教育情報誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education, THE)』が30日にそれぞれ発表した。QSのランキングでは、京都大学が初めて東京大学を抜いて日本で1位となり、THEのランキングでは東大が例年アジア1位だったのが、シンガポール国立大学(NUS)と北京大学に抜かれ、アジア1位の座を奪われた。

QSの評価基準では「国際性」の比重が大きいため、例年シンガポールや香港などの、教育・研究を主に英語で行っている大学がアジアの上位に就いていた。今年もアジア1位のNUSは「国際性」では200点満点中192.5点だが東大は48.3点となり、順位に大きく差がつくこととなった。東大は例年日本の大学の中では1位を維持してきたが、今年は39位となり、38位の京大に、総合点84.8と84.9(100点満点)という僅差で抜かれることとなった。特に東大で「教員一人当たり論文引用数」が81.6点から64.9点(100点満点)に落ち、京大は69.9点から71.5点に上がったことが、順位逆転の大きな要因と考えられる。ただどちらにしても、世界ランキングでは東大は31位から39位に、京大は36位から38位に(アジアでは東大は3位から8位に、京大は5位から7位に)、ともに順位を落としているため、日本は国全体として大学の国際競争力を高めることが必要になっている。

一方、THEでは、例年東大がアジアの1位を守り続け、昨年は世界23位だったが、今年は世界43位、アジアでは3位に落ちてしまった。京大も59位から88位(アジアでは9位を維持)に落ちてしまった。NUSは25位から26位に落ちたがアジア1位となり、北京大は48位から42位に上がり、アジア2位となった。東大はここでもやはり「論文引用数」の点数が74.7点から60.9点(100点満点)に落ちてしまったことが大きな順位下落の原因と考えられる。

英字新聞『ザ・ジャパン・タイムズ(The Japan Times)』が1日に報じたところによると、THEの編集者、フィル・ベイティ氏は、「日本は深刻な公債を抱えている結果として緊縮財政を進め、そのために近年、研究・開発への出資額が大きく落ちており、2015年の主要な研究予算は昨年から3.9%減った100億ドルになっている。政府はまた大学や研究機関の運営にとって基本的な援助金となる経営補助金を削減している。日本はこれまでアジアの地位向上をリードしていたが、今はもっと賭けに出て、近隣のライバルと競合できるよう、研究にさらに投資していかなければならない
と述べた。一方で同氏は、日本が41校をランクインさせていることから、国としてはアジア1位であり、世界でも3位であることを評価している。

日本のトップの大学で論文引用数の点数が下がった、つまり研究そのものの成果が問題になっているということを国の問題として真摯に受け止め、研究活動への姿勢を見直していくという課題を突き付けられるランキング結果となった。

2つの世界大学ランキング 東大の敗因は?

2つの世界大学ランキング 東大の敗因は?

参考記事
「東大、アジアトップから転落 THE世界大学ランキング」
「世界大学ランキング 東大は39位、京大が抜いて38位」

(写真はイメージ)