東日本震災を想う、3.11に読みたい本5選

東日本大震災を想う、3.11に読みたい本5選

2011年3月11日、東日本大震災が起こり、同時に東京電力福島第1原子力発電所の事故が発生。津波と原発事故が多くの人の命と生活、そして未来を奪っていった。

今、あの未曽有の災害から9年目を迎えた私たちが、目を向けるべきものは何なのか? 3.11に思いを馳せ、考えさせてくれる5冊の本を、ニュースソルト記者が紹介する。
 

『ふくしまからきた子』

子どもが対象の絵本だが、大人の皆さんにお勧めしたい。

福島から広島に引っ越してきた女の子まやが、もうサッカーはやらないと言う。「だって みんな まだ そとで あそべないから」。放射線のこと、ヒバク2世の自分のおじいちゃんのことを知ったサッカー少年だいじゅは、「おれ しょうらい そうりだいじんになる!そうして ほうしゃのう なくすんじゃ!そしたら いっしょに サッカー できるじゃろ!」と夢を語る。まやは「バーカ」と、お腹を抱えて笑った。その満面の笑顔は、辛い心の裏返しだっただろう。

大好きだった「サッカー」を奪われたまやを通して、多くのものを奪われた福島の人々の姿が浮かび上がる。「総理大臣になる」など、大人になった私たちからすれば、何と幼い夢だろう。しかし、まやに会い「ふくしま」のことを知り、「自分が何とかするんだ」と熱く決意するだいじゅの姿には、大人が忘れてしまった大切なものを思い出させ、読む人の胸を打つものがある。

複雑な問題の解決に頭を悩ませている私たちを、素朴な悲しみと決意、そして夢に立ち返らせてくれる一冊だ。(推薦者:平井明)

書誌情報

『ふくしまからきた子』
作:松本猛・松本春野
絵:松本春野
発売日:2012年3月8日
定価:本体1300円+税
発行:岩崎書店
 

『南三陸日記』

「それは一風変わった出産風景だった。生まれたばかりの女児の周りで江利香さん(編集部注:女児の母)と江利子さん(同:女児の祖母)、助産婦さんまでが目を真っ赤に腫らして泣いている」

東日本大震災の4カ月後に宮城県登米とめ市で生まれた赤ちゃんがいた。この子の父親は震災当日、石巻市で津波に飲まれて亡くなっており、残された家族にとって新しい命の誕生は、まさに絶望の暗闇を照らす希望の光のようだった。『南三陸日記』の文庫版の表紙には、このとき生まれた梨智りさとちゃんが小学生になり、ランドセルを背負って微笑む姿の写真が使われている。

同書は震災直後から宮城県南三陸地域に赴任し、被災地の中に入り込んで克明な取材をした朝日新聞記者・三浦英之氏によるもの。その多くは、震災を生き延びた人たちのパーソナルヒストリーに割かれており、身近な人の死と多くの喪失を経験した市井の人々が、再び生きようと立ち上がる姿が描かれている。

深い悲しみと喪失を通して見えてくる、生きることの尊さ。そして突き付けられる、残された私たちが果たすべき使命。被災地の風景やそこに生きる人たちの人生が、読む人の心の中にリアルに立ち上がってくる一冊だ。(推薦者:見市知)

書誌情報

『南三陸日記』
著者:三浦英之
発行日:2019年2月25日
定価:550円+税
発行:集英社文庫
 

『孤塁―双葉消防士たちの3.11』

東日本大震災直後、太平洋に面した東京電力福島第1原発で事故が発生した時、その原発のある福島県双葉地区を守った消防士たちがいた。

当時、自衛隊やハイパーレスキューの活動は報道されたが、双葉の消防士たちのことが知られることはなかった。もちろん、消防士たちが緊急時に出動するのは職務上当たり前のことだ。しかし彼らは、地震と津波で地域が壊滅的な状況に置かれ、原発から漏れ出す放射能のため他県から応援が来ない中で住民たちの救急・救助に当たるという極限状態を経験した。想定されていなかった原発事故に対し、訓練を受けたこともないのに、原発に冷却水を注入する仕事をしたのも彼らだ。まさに「特攻」という言葉がぴったりだったと消防士たちは言う。

なぜ、彼らはそのような状況に置かれなければならなかったのか。「死ぬかもしれない」という思いを抱えて「孤塁」を築いた消防士たちの姿を想像しながら、現場の人間の犠牲の上に成り立つ災害対策について、痛切に考えさせられる。

昨今、予想もしなかったような災害が次々と起こっている中で、私たちの社会のあり方について、深く考えさせられる1冊だ。(推薦者:碓井弓)

書誌情報

『孤塁―双葉消防士たちの3.11』
著者:吉田千亜
発売日:2020年1月29日
定価:本体1,800円+税
発行:岩波書店
 

『原発は滅びゆく恐竜である』

世界中が「夢のエネルギー」原子力発電の夢に酔っていた1970年代、福島第一原発事故の可能性をすでに予見した人がいた。原子核物理学者の水戸厳だ。

同書では原子力の原理からスリーマイル島とチェルノブイリ原発事故の真相、そして反原発に向けた戦いの論理が語られており、「原発の潜在的危険性とは何か」を理解することができる。

「原発とは、広島に落とされた原爆1000発分の死の灰を1年間で生成し、それを今後数100万年に渡って人類が管理しなければならない『永久の負債』である。そして、原水爆時代と工業文明礼讃時代の終末を飾る恐竜のように滅んでいく」と、著者は明言する。

同書は水戸の論文、講演、裁判関連の文章を集め構成したもの。3.11から9年が経過し原発復活ムードが流れ始めた日本で、フクシマを経験した我々がどのように原発に向きあうべきなのか、必要な論理のエッセンスが詰まっている。(推薦者:矢野和治)

書誌情報

『原発は滅びゆく恐竜である』
著者:水戸厳
発売日:2014年3月7日
定価:本体2800円+税
発行:緑風出版
 

『空をゆく巨人』

中国福建省出身の世界的現代アーティスト、蔡國強さいこっきょうと、福島県いわき市のおっちゃん、志賀しが忠重ただしげ。生まれた国も育った環境も違う二人は、1980年代の終わりにいわきで出会った。当時まだ無名だった蔡は、志賀やいわきの人々の全面協力を得て作品を生み出すようになる。いつしか蔡は現代アートのスーパースターとなり、志賀たちは世界のアートシーンで「いわきチーム」と呼ばれるようになっていた。

そんな二人の最大の作品が、東日本大震災の翌々年にオープンした「いわき回廊美術館」。原発事故で未来の子どもたちに「負の遺産」を残してしまったことを深く悔いる志賀が、何とかならないかと考え 、 思いついたのが「いわき万本桜プロジェクト」だった。美術館周辺の山々に9万9000本の桜の木を250年かけて植樹するという壮大なプロジェクトだ。いわきを「行きたくない場所」ではなく、「誰もが訪れたくなる場所」にしたい。その願いの先に、未来の桜の名所いわきを見ている。

やろうとする思いがあるならできないことなんてない。そんな勇気を与えてくれる、2人の巨人の人生を綴ったノンフィクション作品。(推薦者:芳山喜代)

書誌情報

『空をゆく巨人』
著者:川内有緒
発売日:2018年11月26日
定価:本体1700円+税
発行:集英社

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